(※画像はイメージです/PIXTA)

本記事は、西村あさひ法律事務所が発行する『スポーツビジネス・ロー・ニューズレター(2022/4/1号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所または当事務所のクライアントの見解ではありません。

4.(補足)NFTに関連するガイドラインについて

近年、複数の民間団体がNFTに関連するガイドラインを策定しています。例えば、一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会が2022年3月31日付けで改訂した「NFTビジネスに関するガイドライン(第2版)」※15においては、「NFTは通常、財産的価値を有すると考えられるため、NFTを利用したゲーム(以下、NFTゲーム)では、サービス設計によっては賭博該当性に留意すべき場合があります。」とした上で、「特に留意を要するケースとして、パッケージ販売やガチャの手法を用いてNFTを販売する場合、こうした手法ではNFTの獲得に偶然性があるのが通常であることを考慮しますと、販売者と購入者との間や購入者と他の購入者との間で財産上の利益の得喪を争う関係・・・が認められるかを検討すべきこととなります。その判断のためには、サービス形態に応じた個別具体的な検討が必要ですが、例えば、販売者は自らが設定した販売価格に相当する対価の支払いを受けることとなりますので、購入者において、その販売価格に応じたNFTを獲得していると評価できる事情があれば、当該サービスは購入者が販売者との間で財産上の利益の得喪を争うものではないと整理しうると考えられます。」と指摘されています。

 

※15 https://cryptocurrency-association.org/cms2017/wp-content/uploads/2022/03/JCBA_NFTguidline_v2.pdf

 

当該指摘は賭博に該当しない事業形態を明らかにする意図でなされたものと思料されますが、上記3.で述べたこれまでの整理と整合するものと考えられます。もっとも、今後、このようなガイドラインにおいて、賭博に該当しないと考えられるより具体的な事業形態を示した上で、かつ、射倖心を過度に煽らないビジネスモデルを提示するなど、消費者保護にも配慮した指針が示されることが望まれます。

5. おわりに

以上のとおり、少なくとも上記3.(1)記載のサービス内容と実質的に同等の内容と評価できる限り、NBA Top Shotと類似するサービスを日本国内で提供した場合に賭博罪は成立しない(すなわち、NBA Top Shotのようなサービスは賭博に該当しない事業形態である)と解することも十分に合理的であるものと考えられます。

 

また、今後は、NBA Top Shotと類似したサービスだけではなく、ランダム型販売と二次流通市場を併設した他のサービスや、これ以外の日本独自のNFTビジネスが日本で展開されることが予想されます。事業者やコンテンツホルダーにとっては、新規のNFTビジネスに関して賭博罪が成立するリスクが少しでも存在する場合には、当該ビジネスを開始することは事実上困難になると考えられます。そのため、上記2.①及び②の提言のとおり、日本のNFTビジネスの発展を阻害しないためにも、例えば、各業界団体及び関係省庁が連携して、賭博罪の保護法益にも十分に配慮したガイドラインを策定し、賭博に該当しない「事業形態」を整理・類型化することが重要であり、これにより、事業者は安心して新規のNFTビジネスを積極的に展開することができるようになると考えられます。

 

もっとも、賭博罪が成立しないと整理した類型と類似するサービスであったとしても、全てのビジネスモデルが許容されるわけではなく、NBA Top Shotの例でいうと、事業者が二次流通市場を運営・管理するのみならず、二次流通市場においてユーザーからNFTを買い取るような場合には、NBA Top Shotのサービス内容と実質的に同等の内容と評価できるか疑問の余地があるため、事業者においては慎重な判断が必要になることには留意すべきと考えられます。また、ユーザーの射倖心を過度に煽るようなサービスについては、消費者保護の観点からの規制が必要となることは言うまでもありません。そのため、上記2.③の提言のとおり、ランダム型販売や二次流通市場を利用してNFTを購入する消費者を保護する観点からのルール整備は別途検討を進めるべきであり、消費者庁等の関係省庁の見解を踏まえて各業界団体におけるガイドラインの策定等を進めていく必要があると思われます。

 

 

平尾 覚
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

 

稲垣 弘則
西村あさひ法律事務所 カウンセル弁護士

 

小幡 真之
西村あさひ法律事務所 弁護士

 

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平尾覚
小幡真之
稲垣弘則

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