民間委託空港状況フォローアップ会議 取りまとめ報告書の概要 (※画像はイメージです/PIXTA)

本記事は、西村あさひ法律事務所が発行する『金融ニューズレター(2022/4/1号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所または当事務所のクライアントの見解ではありません。

本ニューズレターは、2022年4月1日までに入手した情報に基づいて執筆しております。

1. はじめに

2022年3月11日、国土交通省は、「民間委託空港状況フォローアップ会議取りまとめ報告書」(以下「報告書」といいます)を公表しました。

 

報告書では、まずコンセッション方式による空港運営(以下「空港コンセッション」といいます)の目的の再確認をし、その上で、空港コンセッションの仕組みの更なる検証と空港コンセッションのコロナ禍を踏まえた実施契約のあり方の検証を行っています。

 

具体的には、(A)空港コンセッションの仕組みの更なる改善策として、①一次審査における提案審査の省略・簡略化、②二次審査の提案項目・配点の見直し、③駐車場事業譲渡スキームの見直し、④瑕疵担保要件の見直し、⑤空港の脱炭素化、AI・ロボット等新技術対応等の取組を促す工夫のあり方について提言がなされ、加えて、(B)空港コンセッションのコロナ禍を踏まえた実施契約のあり方の検証として、①合意延長期間、②運営権対価の支払方法、③更なるリスク分担条項の新設、④混合型を採用した場合における不可抗力時の対応措置について、提言がなされています。

 

このニューズレターでは、報告書の内容のうち、上記(B)の空港コンセッションのコロナ禍を踏まえた実施契約のあり方の検証内容について概説します。

2. 背景―コロナ禍の状況と国による経営支援施策

「コロナ禍における航空当局の航空会社支援策としてのU/Lルールの適用免除について」(弊事務所金融ニューズレター2021年3月4日号)においてご紹介しましたとおり、コロナ禍により過去に例を見ない規模での航空需要の大幅な減少が続いている中で、航空・空港関連企業の厳しい経営状態が続いていることを踏まえ、国土交通省はそれらの企業に対する支援施策を取りまとめ、各種支援を行っています。

 

その中で、空港コンセッションが行われている国管理空港(以下「民間委託空港」といいます)に対する支援策としては、空港施設の整備に対する無利子貸付、運営権対価分割金等の年度越え猶予、空港運営事業期間の延長及び実施契約上の履行義務の緩和などが行われています。

 

もっとも、報告書では、かかる支援策のみでは、コロナ禍のような不可抗力により運営権者が被った損害を補填するには不十分である旨の意見※1が多く寄せられていること、今後国管理空港での空港コンセッションを推進するにあたり採用が検討されている混合型※2において、不可抗力発生時の措置に関する検討が十分に行われていないことを踏まえ、今後の案件において運営権者と締結する実施契約のあり方について、以下の提言がなされています。

 

※1 報告書では、一定の事業者に対するアンケートを実施し、それらの意見を踏まえつつ議論を行ったものとされています。

 

※2 選定事業者のコストが、公共部門から支払われるサービス購入料と、利用料金収入等の受益者からの支払の双方により回収される類型をいう。(「PFI事業の実施状況について」(平成26年6月内閣府)参照)

 

A)合意延長期間

民間委託空港に係る実施契約では、不可抗力に伴う措置として、不可抗力により事業について増加費用若しくは損害が発生し、又は事業の全部若しくは一部の停止が発生した場合(以下「不可抗力による障害」という)、運営権者は、当該不可抗力による障害によって発生した増加費用又は損害を回復するために必要がある場合に限り、事業期間を延長することについて国に協議を申し入れることができ、国と運営権者が協議により合意した日まで事業期間を延長することができることとされています。

 

当該合意延長期間については、熊本空港を除く民間委託空港事例では、上限が最長5年と定められているものの、コロナ禍のような不可抗力が今後発生した場合の影響に鑑み、今後案件ごとに、発生した損害の状況に応じて期間の弾力的な変更が可能となる仕組みや、次項以降に述べる他の損害補填措置を併せて検討することが望ましいと提言されています。

 

B)運営権対価の支払方法

公共施設等運営権及び公共施設等運営事業に関するガイドライン(令和3年6月18日改正)(以下「運営権ガイドライン」といいます)※3においては、「民間資金の活用というPFIの趣旨に鑑みた場合、ファイナンスリスクを公共側で負う形は望ましくなく、民間側で負う(運営権者が金融機関等から融資を受ける等)仕組みの導入を推進する観点から、支払については一括払いを検討するべきである。仮に分割払いを採用する場合でも、一定の一括払い(当初分)を組み込むよう努めるものとする」(運営権ガイドライン28頁)とされています。

 

※3 https://www8.cao.go.jp/pfi/hourei/guideline/pdf/uneiken_guideline.pdf

 

これに対して、今回の報告書では、コロナ禍のような不可抗力により事業環境が急激に悪化した場合の運営権者の財務リスクの軽減のために、運営権者の支払は分割払いであることが望ましいとの意見や、毎回の支払額を固定額とするのではなく、運営権者の収益や旅客数等と連動する形が望ましいとの意見を踏まえ、案件ごとにその背景・事情を踏まえた上で、分割払いを柔軟に認めることが望ましい旨、提言されています。

 

また、運営権対価については分割払いを採用した上で、その支払総額を定めることなく、その運営権者の収益や旅客数等連動させる形とする等の方法を検討することも考えられるとしつつ、これらの数値についてはその他外部環境の変化や運営権者の経営努力によっても変動するものであること等も考慮が必要である点も提言されています。

 

なお、運営権対価の変動額での分割払いについては、「諸外国の空港民営化事例」(弊事務所金融ニューズレター2020年12月14日号)の2(2)においてご紹介しましたとおり、諸外国の空港民営化事例においては既に採用された例もあり、空港運営会社の毎年のEBITDAの一定比率を前提とした金額とする等、官民においてリスク及びプロフィットをシェアする仕組みも見られるところです。

 

C)更なるリスク分担条項の新設

上記2の冒頭で述べましたとおり、空港施設の整備に対する無利子貸付、運営権対価分割金等の年度越え猶予、空港運営事業期間の延長及び実施契約上の履行義務の緩和等が行われているところではありますが、報告書では、更に今後の国管理空港での空港コンセッションにおいては、不可抗力事象が発生した場合における運営権者に対する具体的な損害補填措置として、運営権ガイドラインにおいても提唱されているプロフィット/ロス・シェアリングに関する条項や、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)において認められている国による無利子貸付に関する条項の実施契約への導入等について案件ごとに検討することが望ましいとの提言がなされています。

 

プロフィット/ロス・シェアリングに関する条項とは、「各事業年度の収益があらかじめ規定された基準を上回った場合に、その程度に応じて運営権者から管理者等に金銭を支払い、下回った場合に、その程度に応じて管理者等が運営権者の収益減少分を負担する条項」(運営権ガイドライン18頁)とされています。

 

D)混合型を採用した場合における不可抗力時の対応措置

取りまとめ報告書では、現時点で空港コンセッションを導入していない国管理空港の中には、独立採算による事業運営が困難と思われる空港があることを指摘した上で、そのような空港における空港コンセッションを導入する場合、混合型を採用することも考えられる旨、述べられています※4。そして、混合型が採用された場合において、従前の民間委託空港に係る実施契約において採用されている不可抗力時の損害填補措置が機能しない可能性が以下のとおり指摘されています。

 

※4 なお、減価償却費を除外した上で、独立した事業体として空港施設を運用できる旅客数基準については、少なくとも年間270万人の航空需要が必要との研究結果があります(Kato, K., Uemura, T., Indo, Y., Okada, A., Tanabe, K., Saito, S., Oguma, H., Yamaguchi, M., Shiomi, E., Saegusa, M., Migita, K.(2011). Current accounts of Japanese airports. Journal of Air Transport Management, 17(2), 88–93. https://doi.org/10.1016/j.jairtraman.2010.07.001)。  

 

第一に、混合型では、公募当初の時点で事業期間中の国の公的負担額の上限が確定するため、合意延長したとしても、当該延長期間に追加の公的負担が行えるとは限らないとされます。すなわち、国管理空港のコンセッションは、公募当初の時点で、当該事業に係る予算措置として、事業期間中の国の公的負担額の上限額について、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(以下「PFI法」といいます)第68条において認められる範囲の年限以内※5で、債務負担に係る国会の議決を経ます。そして、合意延長期間における国によるサービス購入料の支払については、当該予算措置に含まれない債務負担となるため、そのサービス購入料の支払のための単年度歳出予算の計上を義務的経費化するには、合意延長期間を支出年限とする新たな債務負担行為(=国会での議決)が必要となります。したがって、実施契約締結時点において、将来の不可抗力事象発生による合意延長期間における公的負担が、必ずしも保証されているわけでないことを意味します。

 

※5 債務を負担する行為により支出すべき年限は、当該会計年度以降30箇年度以内とされます。

 

第二に、運営権者による投資の履行義務の猶予を認めたとしても、そもそも混合型が採用されるような空港においては、運営権者が負担する投資金額が独立採算型の空港に比べて比較的小さくなることが見込まれるため、当該履行猶予は運営権者の足元のキャッシュフローの改善にあまり寄与しない可能性があるとされています。

 

これらの懸念に対する措置として、運営権者のモラル・ハザードを最大限防止する観点から、独立採算型を採用した場合と同様、官民によるリスク分担の内容の明確化等に配慮しつつ、まずはプロフィット/ロス・シェアリングに関する条項や国による無利子貸付に関する条項の実施契約への導入等を案件ごとに検討することが望ましいとの提言がなされています。

 

 

原田 伸彦
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

 

赤松 祝
西村あさひ法律事務所 アソシエイト弁護士

 

 

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