世界の経済連携協定に参加する日本の将来
RCEPに加盟した地域は、中国の巨大な市場と生産力に席巻されて中国中心の経済圏になってしまうというような懸念も聞かれますが、これは考え方次第です。中国とその他のRCEP加盟国の間で関税がなくなっていくと、中国以外の国に工場を立地し、中国に物を売ることも可能だからです。必ずしも中国による輸出に有利なものではなく、むしろ中国の周辺国が中国市場に輸出することで経済発展するといった新しい側面もあるのです。
TPPやRCEPの話となると、日本国内では何かと「亡国論」が一部で流行ることがあります。ルールを守って、ビジネス上の競争をしている人にとっては、商機も利益も期待できます。政府の機関、政府の規制や補助金によって守られた緩めの競争をしている人たちにとっては、こうした自由貿易協定は少し困った話なのかも知れません。誰の視点で見るかによって、利益や不利益の捉え方は異なるものです。
海外に出て行って、そこで日本の国益を増進するために頑張ろう、という人にとっては、TPPは非常にありがたい枠組みです。日本企業が日本国内と同じように信頼できる国際的なビジネス環境ができることは、日本人が国際競争の舞台で活躍する、これからの日本を担っていく人たちには、ビジネス上願ってもないことです。
補助金行政が蔓延っているように見えても、若い人たちにとっては、日本はやはり自由貿易・自由投資で成り立っている国です。むしろ、日本の凄さは、国際的な貿易協定で勝つか負けるかという話とは違うところにあります。TPPや日欧EPA、事実上のアメリカとのFTA、RCEPまで含めて、ありとあらゆる経済連携協定にすべて加盟している国は、日本しかないのです。
だから、日本はこうした自由貿易や経済連携協定のハブになる国なのです。各国に網の目のように張り巡らされた協定の中心で、色々な国々の得意なことを取引する結節点、世界経済という車輪の要です。だから「日本に投資をすると、どの国にとっても有利になる」、これが日本の凄さです。
こうした条件を最大限に活かし、日本人が自由な貿易や投資の中で生きる良い環境が、現在の日本には用意されているのです。だから発想を切り替え、無駄な規制や税金を整理して、攻めの姿勢で利益を最大化することによって国が強くなり、ビジネスが元気になって国民が豊かになった方が、みんなが幸せになれるのです。
渡瀬 裕哉
国際政治アナリスト
早稲田大学招聘研究員
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