(※画像はイメージです/PIXTA)

ある精神科医は診察室のドアを開け、患者に診察の順番がきたことを伝えています。時には患者のところに出向いて診察室まで促すといいます。マイクを使って呼びつけず、直接、待合室を眺めての声掛け。いったい何をしているのでしょうか。精神科医が著書『シン・サラリーマンの心療内科』で解説します。

燕の雛はなぜ「5羽」なのか?

3月末、玄関の軒に燕が巣を作り5月末ごろには雛が巣立つ。都心から離れた今の家に引っ越してきて20年以上になるが、住み始めてしばらくして燕が毎年来るようになった。雛の数はいつも5羽で、6羽というのは見たことがない。実際、巣は6羽の雛を養えるサイズではない。

 

巣は三角帽子の尖った先を下にして壁に取り付けたような仕様でできている。しかし、中は帽子のように空洞ではなく、わらなどで埋められ、雛が住む帽子の底辺に当たるところは浅い皿のようになっている。時々雛の落下事故が起こるが、巣立つ前の大きくなった雛が何とか押しくらまんじゅうできる、ぎりぎりのサイズしかない。なぜもっと広く深い落ちにくい巣にしないのだろう。

 

巣立ちは、縁からジャンプし飛翔することであるが、失敗すれば、数メートル下の地面にたたきつけられる。軟着陸できたとしても再び巣に戻ることは難しい。雛にとって命がけでしかも1回きりの試みである。広い巣ではその決心は鈍ることだろう。

 

実際、雛は巣から兄弟たちに押し出されるようにジャンプしてゆくように見える。ただ、短い間にすんなり5羽が飛び立つことはまれである。なぜか、1羽なかなか飛び立たない雛がいることが多い。親鳥は早く飛び立つよう促しにやってくるが、そのうち来なくなる。

 

5羽目の巣立ちが遅れがちなのは、兄弟たちの支えや促しがなくなり、広くなった巣に1羽残された不安によるものかもしれない。親も来なくなり、空腹だけが命がけの飛翔を促す。不思議と最終的に5羽目が取り残されることはめったにない。

 

おそらく、雛の数を5羽としているのは巣のサイズも関係しているだろう。もっと大きな巣は親燕の力量を超え、餌を運ぶにしても養えるのは5羽が限度であろう。互いに密着でき相互作用し助け合うにも巣のサイズは適当なのだろう。巣を大きくし雛の数を増やせば飛べない雛を生むかもしれない。

 

東洋の五行説では、自然は5つの要素の相互作用によってできているとする。実際自然を観察すると、5という数字は自然を構成する基本にかかわっていると思えてくる。桜の花弁も5枚、人の指も5本、燕の雛も5羽。ただ、この5という数が自然の中に設計図のようにあるわけではなさそうである。

 

人の指は胎児のごく初期では7本あるという。それが成長の過程で5本に削られる。花弁も私の観察によればはじめは6枚以上あるのが5枚となってゆくことが多い。5は自然の安定した流れに深くかかわるのである。胎児の成長も自然の流れに沿っているから、はじめたくさん作られる指も最終的に5本に収れんしてゆくのだろう。

 

燕の雛が5羽であるのも、雛を成熟させるという自然の意図と深く結びついているに違いない。むろん自然は甘くない。時にカラスに襲われ5羽とも食われてしまう。天候不順で低い気温が続くと、ウイルス性と思われる疫病で全滅することもある。

 

とはいえ、高みに作られた巣は常に転落の危険をはらみつつも、捕食動物から雛を守り疫病を遠ざける。そして、小さな巣のぎりぎりの縁こそが成熟への踏み台となる。

 

燕の巣は自然の中に生きるうえで「無い」ということの重要性も暗示している。人もまた自然の一部である。このことを子供たちに伝えねばならない。いたずらな豊かさの追求や過保護なまでの安全志向が、成熟を阻害することも。

 

遠山 高史
精神臨床医

 

 

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※本連載は遠山高史氏の著書『シン・サラリーマンの心療内科』(プレジデント社、2020年9月刊)から一部を抜粋し、再編集したものです。

シン・サラリーマンの心療内科

シン・サラリーマンの心療内科

遠山 高史

プレジデント社

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