コロナ禍の巣ごもりで「睡眠の質」の低下が引き起こす怖い危機【精神科医が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスは重症の肺炎などの被害をもたらしただけではないようです。人々の生活習慣を大きく変え、運動不足に陥らせたことが、悪影響を与えつつあるようです。いったい何が起きているのでしょうか。精神科医が解説します。

突然抑えられない怒りにかられるように

コロナがもたらしたものは、重症の肺炎や経済的な問題にとどまらない。人の生活習慣を大きく変え運動不足に陥らせたことが、ゆっくりと、毒のように働くかもしれない。

 

40歳のSEのA氏は些細なことで、突然抑えられない怒りにかられるようになった。

 

そもそも最近、よく眠れない。

 

ここ2年、コロナのおかげで、リモートワークで仕事をしているが、もともと、遅くまで会社にいて、日曜日も出勤などしていた仕事人間である。しかも酒もたばこもやらず、おとなしく、無口で、リモート以前から家での存在感は少なかった。

 

ある時、学校から帰宅したとたん、ゲームを始めた中学一年の一人息子に、玄関に転がしてあったカバンを片づけるように言ったところ「うるせい」と、父親を見もしないでいった。それが父親に対する態度かと、無性に怒りがこみ上げ、息子に襲いかかり、首を絞めた。

 

妻が止めにいらねば、死なないまでも、気絶したかもしれない。以後、妻と子はA氏と口も利かず家庭内別居となった。

筋肉運動を最小限な便利すぎる生活環境

夢のなかで、A氏はホームから人を突き落としていた。それにしても夢ばかり見るし、寝つきも良くない。

 

A氏は週に一度出社するが、会社には社員数だけの席はなく、事務所も狭くなった。そもそも、ほかの社員もリモートワークで、会社には数名いるだけで、必要な情報交換のみでさっさと帰宅する。人との緊張はないが、どこかわびしく無視されているような不安にもおそわれる。

 

そんな時、A氏は、自覚はしていなかったが、電車のなかで乗客が妙に憎々しげにみえていた。乗客のちょっとしたしぐさに妙な苛立ちを感じ、肩でも触れたものなら、ホームから突き落としたくなる衝動がよぎった。家に帰っても、以前よりも、より不機嫌になっていたA氏に家族も距離を置き始めていた。A氏は人を心の底では求めつつ、人と交わることに不安を感じ始めていたのかもしれない。

 

A氏は都心のすべて自動化したマンションの13階にすんでいる。そこはこまめな筋肉運動を最小限にする便利すぎる恒常的環境が用意されている。しかし、自律神経の機能にはあまりに恒常的環境への適応は想定されていない。そもそも、生命は流動的な環境において、筋肉によって動的平衡保つことで維持されているが、自律神経はその機能のサポートのためにあり、脳とは独立して機能している。

 

絶えず変化する環境に交感神経と副交感神経をうまく使い分けて、外界と身体機能を調和させるシステムである。空調などに代表される、環境の調和が機械などで強制的に行われると、自律神経はさぼりだす。要するに流れに竿さす機能で、あまり変化のない環境では、やることがないのだ。すなわち自律神経の機能を活性化し、変化に迅速に対応できる能力の維持には、時々一定の刺激が必要で、その代表的なものが筋肉運動である。

 

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精神臨床医

精神臨床医歴45年。新潟県出身。自治体病院長を経て、東京近郊で心療内科を開業。第12回千葉文学賞受賞、時々農民をやっている。

著者紹介

連載コロナうつと闘う精神科医の警鐘「日本人は救われるのか?」

シン・サラリーマンの心療内科

シン・サラリーマンの心療内科

遠山 高史

プレジデント社

コロナは事実上、全世界の人々を人質にとった。人は逃げるに逃げられない。この不安な状況は、ある種の精神病に陥った人々が感じる不安と同質のものである――。 生命の危機、孤立と断絶、経済破綻、そして……。病院に列をな…

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