肥大化したプライドを持つ「死にたい願望」少女が起こした騒動【精神科医が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「死にたい願望」にとりつかれた少女がいます。高校は難しい進学校に合格しました、入ってすぐ学業についていけなくなったのか、遅刻が増え、登校しても教室にいかない「保健室登校」となりました。ある日保健室で「死にたい」と書いた紙を教員に渡したため学校中が大騒動になりました。精神科医が著書『シン・サラリーマンの心療内科』で解説します。

【関連記事】終電の席を譲った女性、席を断った中年、席を奪ったのは【精神科医が解説】

現実的交流のない「セル」の住人

記録的な暴風をもたらした15号台風で、私の家の反対側にあるアパートのステンレス製のごみ箱が道路の反対側まで吹っ飛んだ。むろんごみは散乱し、散らばった生ごみにカラスが群がった。しかし、アパートの住人は誰も片付けに現れない。

 

このごみ箱、風の通り道にすえられているにもかかわらず、風の対策が全くなされていないため、これまでにも、強風のたびに何度も道路に転がり出ていた。仕方なく、我が家人が片付ける羽目になるのだが、アパートの所有者は全くしない。

 

そこで、管理会社に言うと、我が家人があらかた片付けたあと、残りを一応、片付けにくる。が、一向、根本的風対策なるものはしない。また転ぶだろうと言っても、所有者が改善費用を出さないと言うので、できないと、慇懃に突っぱねてくる。

 

所有者も管理会社(かなり有名な会社にもかかわらず、最初3階建てのアパートを建てるという写真を見せながら、建築承諾を求めてきて、実際には4階建てを建てたという、悪質性を有しているが)もさることながら、約20戸の賃貸アパートだが、そこに住む誰一人片付けに現れない。

 

そして、そ知らぬふりをして出かけてゆく。片付けは管理会社がやると思っているのだろうが、これまで何度もごみの散乱があったにもかかわらず、私の知る限り誰も片付けに現れなかった。

 

しかし、住人たちに公共精神が欠けていると決めつけるのは早計である。むしろ住人同士全く交流を持っていないと考えるべきであろう。うかつに手を出そうものなら、自分の出したごみでないものまで自分が捨てたごみと思われかねず、あるいは、すべてを一人で片付けねばならない羽目にもなりかねない、という恐れがあるのかもしれない。

 

交流がないので、他の人間がどういう人種かがわからない。もしも、意地の悪い隣人であったら、他と違った目立つことをすると、自分というものが知られてしまい、時に恨みを買うかもしれない。ようするに、誰だかわからない隣人に自分のことを知られることで何かされるのでは、という恐れがあるのだろう。

 

この心理を読者は不思議に思うであろうか。孤立した社会はわずらわしさからは解放されるかに見えるが、ひとたび狙われれば非常に弱いことは、昨今の事件を見れば容易に理解できよう。誰も守ってくれない。警察に言っても、実際に事が起こった後でしか動かない。

 

それゆえにこそ人は自分のプライバシーが漏れることに神経質になる。プライバシーといっても知られて困るほどのものはそうそうない。むしろ知られることで狙われやすくなるといった恐れで人は過敏となっている。だから、アパートの住人が善人と考えるよりは悪人としておいて自分のことが漏れないようにしておくほうがより安全だと考える心理が働くのだ。

 

こうして過密だが離散的社会はますます、相互の交流を避け、孤立を深めて行く。ネットでの友達を作れるという人もいるだろう。しかし、ネットの友達はごみを拾いに来てくれないが、住人の中に交流する一組でもあれば、協力して片付けに当たることは容易である。

 

そういった機能をほとんどエネルギーなしでやってのけ、相互にかばいあえる仕組みをコミュニティーというのだが、コミュニティーはそのアパートだけでなく、日本社会から消滅してしまっている。そして、リアルな交流を有さないセルのような住まいの中に、京都アニメーション放火殺人事件の犯人のようなモンスターたちは知られることなく悠々と潜んでいるやもしれない。

 

【オンライン開催(LIVE配信)】5/18(水)開催
保有不動産の「価値」を向上させる最適な提案!
家賃収入、節税対策、相続対策、資産運用…「資産活用セミナー」

精神臨床医

精神臨床医歴45年。新潟県出身。自治体病院長を経て、東京近郊で心療内科を開業。第12回千葉文学賞受賞、時々農民をやっている。

著者紹介

連載コロナうつと闘う精神科医の警鐘「日本人は救われるのか?」

※本連載は遠山高史氏の著書『シン・サラリーマンの心療内科』(プレジデント社、2020年9月刊)から一部を抜粋し、再編集したものです。

シン・サラリーマンの心療内科

シン・サラリーマンの心療内科

遠山 高史

プレジデント社

コロナは事実上、全世界の人々を人質にとった。人は逃げるに逃げられない。この不安な状況は、ある種の精神病に陥った人々が感じる不安と同質のものである――。 生命の危機、孤立と断絶、経済破綻、そして……。病院に列をな…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧
TOPへ