組織変革は非公式から始まり公式に移行する
■キーパーソンの特徴
組織変革に前向きな人は、みんなキーパーソンです。他者に働き掛け、自ら行動する人です。
大半のキーパーソンは発言が多く、言いたいことはきちんと主張します。寡黙ではありませんし、仕切り屋でもありません。人の話もきちんと聞くことができます。ワークショップでは「心理的な安全性を高めて対話をしましょう」と話しているので、議論的にならずに相手の話を理解しようと努力します。
オフィシャルではない場面でも同様です。例えばランチで「こんなことをやって、会社が変わると思うか?」と同僚に聞かれたら、「俺は変わると思うよ。だって俺自身も変わってきたし、社長が怒らずに座っているだけでも変わったということじゃない?」などと最初に言い出せる人です。
また、キーパーソンは変革に向けた取り組みにポジティブに乗ってくれます。私がコンサルを行うときはワークショップを開いたり、1カ月間実践するアクションを決めてやってもらったりします。たいていみんな忙しいので、なにか新しいことをやると「またこんなことをやらされるのか」と思う社員も出てきます。しかし、そのときキーパーソンはポジティブに取り組み、頑張る姿を周りに見せます。また「自分はいい会社にしたい。だから一緒にやろう」など、前向きな発言ができます。それによって周りも「あいつを見ていると俺もやらざるを得ない気持ちになる」と動くのです。
■キーパーソンの活躍
組織変革にはステージがあります。最初はインフォーマル(非公式)から始まり、やがてフォーマル(公式)になります。
インフォーマルとは、会社の経営計画のなかに入っていないことです。例えば「気持ちのいいあいさつをする」といったことです。キーパーソンが自発的に行動を始めて、「君のあいさつは気持ちがいいね」「水曜日は俺も玄関に立って一緒にあいさつするよ」などと、アクションの輪が広がっていくのです。そのような活動をインフォーマルな形で続けていきます。
やがてインフォーマルな対話会が始まります。それを継続していくと「対話会は第3金曜日の15 時から1時間」など、徐々にフォーマルなイベントになっていきます。キーパーソンが担当に任命され、社外会議室や菓子の費用が経費として落とせるようになります。
社員が社外研修を企画するようになれば完全にフォーマルになり、予算も付いて年間行事に組み込まれます。
キーパーソンが活躍するのは、最初のインフォーマルのステージです。対話会の事務方として場を設定し文具をそろえたり菓子を用意したりする役割、あるいは参加者として質の高い問いを発する役割です。対話会で「上の幹部がだめだからどうしようもない」と発言する人たちがいたとしても、キーパーソンは「でも楽しく働きたいから、俺たちにできることはないだろうか」という問いかけができるのです。
私は「あなたがキーパーソンですよ」と直接は言いませんが、ワークショップなどで全体に語りかけます。「今日は3回目のワークショップですが、何人かキーパーソンが生まれているように感じます。場の空気を変えてくれてとてもうれしいです」と話すと、心当たりのある人は「俺のことを言ってるな」「あいつがキーパーソンだな」と感じます。