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「病院を変えられるのは」6人の副院長の覚悟
■二代目理事長の苦悩
病院をマネジメントするのは理事長、院長、事務長のトップ3です。それぞれに役割分担があり、経営に関しては理事長、病院の運営に関しては院長、事務的な取りまとめに関しては事務長が担当します。
2017年6月から支援を始めたのは、約800人のスタッフを抱える急性期病院です。離職率地域ワースト3位を改善したいということでした。
経営を担当する理事長は二代目の外科医です。父親である創業理事長が急逝したため呼び戻され、40歳で後継者として就任し数年経ったところでした。
彼は理事長に就任すると熱心にさまざまな改革に取り組みましたが、人望のあった先代を知る職員の心をつかむことができなかったそうでそのことにとても苦しんでいました。
院長とも激しく対立し、病院の運営にも支障が出るほどでした。理事会は完全に形骸化し、大事なことは何一つ話し合われず、参加する理事たちもやる気をなくしていました。さらに、看護部長をはじめとする幹部クラスの離職も相次ぎました。
その状況を改善するため副院長のT医師は自らコーチングを学び、院内にコーチングマインドを導入しようとしていました。しかし、一人の医師が診療の合間にできることには限界があります。そこで私に支援依頼があったのです。
元来、医療従事者は他者貢献度の高い人たちです。自身の存在と行為によって他者に尽くし、そのことによって自身の深い満足感を得る、高次元の精神性をもっています。ところが一般的に病院組織は、構造的にパワハラが発生しやすい組織構造を内包しています。そういった問題をシステマティックに解決するノウハウや対策が不十分だと職員満足度が低下し、スタッフの離職につながります。
ナイチンゲールも「構成員の自己犠牲のみに頼る援助活動は決して長続きしない」と言っています。私は、医療従事者の自己犠牲に頼り過ぎる運営スタイルは、日本の未来のためにも変えていく必要があると以前から考えていました。この病院でもまさしく構造的な問題が起きていたので、まずは職員満足度の向上、そして理事長と幹部職員との関係の質の変化に取り組むこととしました。
■具体的な取り組み
最初の1年は、一般職員の横糸と縦糸の強化です。布地を織り上げるように横と縦の関係の糸を増やしていくほど、離職率は下がっていくからです。
まず看護部、リハビリ部、医療技術部、事務部などの一般職員を中心に参加してもらい毎月2回のグループワークショップを開催し、横糸を通していきました。人生観や幸福観などについて深く探求を行い、職種を超えて関係の質を徐々に高めてもらったのです。その次の段階では看護師長や課長クラスの中堅幹部にも参加してもらい、一般職員との間に縦糸を通していきました。
対話を重視したこのグループワークショップは参加者から好評でした。医療現場では、患者の命を守るために高レベルの多職種連携が必要とされます。この病院は長年その難しさに悩んでいたのですが、ワークショップをきっかけに連携のレベルが向上していきました。理事長は対話の重要性を理解し、全職員の半数以上の500人が集まる対話会の開催を決断しました。私は自分の養成塾の卒業生4人にサブファシリテーターとして応援してもらい、サポートすることになりました。
横糸が強化されてきたのを確認して次に取り組んだのは、経営層と中堅幹部・一般職員間の縦糸の強化でしたが、ここで大きな壁にぶつかりました。病院組織は一般企業と大きく違い、経営に関わる人数が圧倒的に少なく、意識も違います。800人規模の病院でも、経営しているのは理事長一人です。これは取締役会で意思決定していく一般企業では考えられません。副院長、外科診療部長、看護部長という理事会役員はどれほど優れた医療従事者であっても、経営手法や経営数字をまったく知らないことは珍しくないのです。
つまり経営幹部としての自覚が薄く、院内の経営や組織に関する課題が他人事だったのです。理事長の苦悩の要因はここにありました。
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