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「幹部大学」が出した1つの結論
■次期社長候補としての覚悟を決めてもらう
幹部5人に足りないものは経営の覚悟と知識でした。そこで「幹部大学」を組織し、毎月1回経営を学んでもらうことになりました。しかし、まずは次期社長候補を決める対話が必要です。最初の3カ月は互いの顔色をうかがい、積極的に発言する人はいませんでした。
会社や社長の文句を言うときはあれほど饒舌だったのに「会社の未来を背負う覚悟を決めて欲しい」と迫ると、貝のように口を閉ざします。私は彼らの自発性の芽生えを信じて、粘り強く対話の場をホールドし続けました。その結果、営業部門と対立することの多かった整備工場長が次期社長候補として手を挙げてくれたのです。
「このような前向きでない対話を続けていても会社は変わらない。社長はこれからも私たちを否定し続けるかもしれないが、それに負けるようではどのみち会社の未来はない。私は話し下手だし、社長にいちばんふさわしいとは思っていない。ただほかの営業部長たちは個人売上も抱えていて、それを落とすわけにいかないという心配が強い。
それならば、工場長である私が短期的に社長の役を受けようと思う。その間に部下が育って売上を担ってくれるようになったら、もっと力のある部長に交代してもらってかまわない」
ほかの幹部たちから様子見の雰囲気が完全に消えたわけではありませんが工場長の覚悟に触れて幹部大学の雰囲気が変化し、結束に向かって進み始めました。私も支援の方向を具体的なアクション作成のサポートに切り替え、部下の育成や新規事業の検討などに取り組みました。
そして、ある事業部で従業員の成長を視野に入れた新規事業の企画提案が作成されました。幹部大学で詳細検討を行った結果、ビジネス的メリットが高くないという判断が下されました。
しかし、幹部が自発的にほかの事業部の課題を検討した初めてのケースは、幹部たちの認識の変化に大きく寄与しました。彼らは「他部門の課題も会社の課題であり、自分たちはそれを自分事として検討することが求められている」と理解したようでした。
その後、整備工場を利便性の良い場所に戦略的に移転する件も検討され今までのように「よその部門のことまでかまっていられない」という雰囲気は完全になくなりました。
それ以来、幹部たちは部下の育成を本気で意識し始めました。自部門内での対話を開始し、部下の意見を取り入れながら営業スタイルや朝礼、会議を見直しました。その結果、部門内での会話が徐々に増えていったのです。
特に本店営業部は明らかに雰囲気が明るくなり、全社員だけでなく社長からも評価されたのです。寡黙だった担当幹部が自信をもって発言するようになり、彼の顔に笑顔が増えていきました。
整備部門の工場長はかねてより部下との対話がもっと必要だと感じていたので、10人の部下全員と1on1ミーティングを行いました。ぎこちない様子で努力している上司を見て、長年批判的だった副工場長が協力を申し出たのです。必要最低限しか会話しなかった2人でしたが、部下の育成や新規事業について相談し合うようになりました。
小さな変化を積み重ねながら、幹部大学結成から1年が経ちました。あらためて幹部たちに事業承継の覚悟を問いかけると、一人の部長が言いました。
「今まで社長が評価してくれない、話を聞いてくれないと言い続けてきたが、私たちの部下も同じように思っているのではないか。もう社長の批判をやっているときではない。社長がどうあれ、私たちは社員に対して『良い上司』になる努力をしていこうじゃないか」
この意見には幹部全員が賛同しました。社員の本音を聞くことが不可欠だと合意したのです。しかし、社員は幹部や会社に不信感を持ったままです。そこで、今までの反省と謝罪、そしてこれから良い会社にする決意とそれに対する協力のお願いを手紙にして社員に渡すことが決まりました。
「働く仲間のみなさんへ」と題したその手紙は、幹部5人の連名で出されました。彼らは創業30年を迎え、さらに長く企業が続いていくために社員を大切にする会社でありたいと決意を述べ次のように伝えました。