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管理会計では、最低でも「予算」「費用」に注目
では、管理会計ではどこに注目すればよいのだろうか。細かく管理し過ぎると手間が膨らんでしまうが、少なくとも予算と費用だけは注目しておこう。
予算については、今期、来期の数字を管理する。必要に応じて数年後を見据えた中長期的な数字を管理する。
例えば、今期の予算であれば、現時点でどれくらいの利益が見込めるか、前期と比べてどうか、金額は増えるのか減るのかといったことは基本情報として押さえておきたい。予算の動向をリアルタイムに近い情報として把握できていれば、これまでレアテクとして解説してきた節税対策(【⇒関連記事:『「脱ハンコ」の侮れない節税効果』】)なども打てるようになるだろう。期末になって「利益が多い」「少ない」などと慌てるのは、正しく予算を管理できていないことが原因。
まず、費用は固定費と変動費に分けて管理する。
固定費は、賃料、光熱費、人件費など売り上げの増減に関係なく必ず発生する費用のこと。変動費は、原材料費、加工費など売上に応じて増減する費用を指す。仕事量に応じて変わる外注費なども変動費に含める。
優良企業ほど変動費率はほぼ一定で推移するが、多くの中小企業はこの変動費率がぶれている。変動費が1%ぶれ、売上の1%の利益が変わるとしたら、年商10億円の会社は利益が1000万円変わることになる。これは金額的にも経営に与えるインパクトもかなり大きい。だからこそ、費用の管理を徹底して、変動費率がぶれない経営の実現が大事。
先ほど質問した「固定費いくら?」も、費用の管理に関わる重要な問いと言える。
赤字の原因は、市場環境やニーズの変化などによる売上の減少が一因となることが多いが、無駄な固定費のせいで赤字に陥っている会社も少なくない。固定費がいくらか答えられなければ、無駄に気づけず、改善することもできない。景気はコントロールできないが、費用はコントロールできる。経営者判断で固定費を徹底的に削減することが、赤字削減や赤字からの脱却につながるのである。
管理会計は、単に数字を管理するための手法ではなく、経営改善に向けたあらゆる施策を練るきっかけにもなる。予算と費用を把握し、手元の資金が足りていないことが分かれば、原因を究明するとともに、解決策を考えることができる。保有する現金の目安は、固定費の6ヵ月。手元の資金が足りていなければ、金融機関から調達する。資金繰りをよくするために、売掛金の回収を早くしたり、建物、土地、有価証券などを現金化したり、手元の現金を減らさないという点で、買掛金の支払いを遅くする交渉をすることもできる。
手元の資金が十分に足りていることが分かれば、そのお金を投資や運用に振り向けるといった施策も見えてくるだろう。社員を採用したり、既存の社員の賞与の原資として貯めておいたり、魅力的な投資先を探し、事業拡大の原資にすることもできる。現金をきちんと管理している会社は、思わぬ倒産リスクを減らせる。
また、現金をきちんと管理している会社だからこそ、投資、事業拡大、M&Aといったチャンスが来た時に、十分な現金を持ってチャレンジできるのである。