(※写真はイメージです/PIXTA)

会社が潰れる本当の原因は、赤字や債務でなく「資金不足」です。資金不足に陥らないためには、助成金や補助金、借金などの様々な資金繰り手段はもちろんのこと、節税などによって手元のキャッシュを減らさない工夫も欠かせません。資金繰り専門税理士の筆者が、「8割の経営者ができていない」という資金繰りテクニックを紹介します。

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      「未払費用」の活用で大きく節税

      税法は「債務確定主義」。

       

      どういうことかというと、費用の発生が確定した時点で計上するのが原則で、支払いが確定している経費は、未払いであっても損金になる。

       

      つまり、あとで払う経費だったとしても、帳簿上は未払金や未払費用として経費計上することができる。

       

      これは資金繰りを良くする方法の一つ。

       

      未払金や未払費用は、計上した時点では現金を払っていない。現金を減らしていない状態で損金に算入できる。

       

      この方法で、決算時に未払費用を経費にしておくことで、当期の利益を抑え、節税効果が見込める。節税できれば手元に現金が残りやすくなるから、資金繰りが良くなる。

      【①給与】

      例えば、給料。

       

      毎月の給料を15日で締めている(16日から翌月の15日で計算している)としよう。この場合、決算月の16日から翌月15日までの給料は、期をまたいだ翌月の支給になる。

       

      16日から月末までの給料は決算時には発生しているため、この分が未払になり、未払金として「今期」の経費にできる。

       

      翌月には支給するため、支給総額が減るわけではない。しかし、決算のタイミングでは手元の現金は減っていない。

       

      ここが大事。今期の利益を抑える効果もあるが、決算書上、現金を多く持っていることになる。融資を受ける場合、銀行などの金融機関は現金を多く持つ会社を好むため、印象が良くなる。

       

      社員が多ければ多いほど未払金は増える。社員が多い会社や人件費の割合が大きい会社ほど、これは覚えておきたいテクニック。

      【②クレジットカード】

      カードで先払いした経費も未払費用になる。カードの引き落としは通常1カ月後くらいになるため、手元の現金を残した状態で未払費用として計上できる。

       

      光熱費、通信費、広告宣伝費など、費用の発生よりも現金の引き落としがあとになるものは、だいたいこの方法で未払計上できる。翌月引き落とす社会保険料も未払計上できる。

      【③税金】

      税金はどうか。

       

      法人税などは対象外だが、不動産取得税、自動車税、固定資産税、都市計画税などは、発生した年度の損金にできる。

       

      通常、これらは納付した時に租税公課で処理する。

       

      しかし、税額が確定していれば、決算時に未払いであっても未払費用として計上できる。今期中に発生した税金なら、債務確定主義の考え方に基づいて、今期の損金(未払金や未払費用)として計上できるわけ。

       

      例えば、固定資産税。

       

      固定資産税は、土地、建物、償却資産の3つに対して発生するもので、1月1日時点の所有者が納税する。納付は4回(4〜6月、9月、12月、翌年2月)で、1回目の納付時に税額の総額と各回の納税額が分かる。

       

      ポイントは、税金は1月1日に発生していて、納付書が4月〜5月に届くという点。納付書の到着をもって税額が確定するため、決算時点で納付していなかったとしても未払金として計上できる。

       

      5月決算の会社なら5月に固定資産税の納付書が届いた場合、6月、9月、12月、翌年2月の固定資産税が未払いだったとしても、まとめて5月の経費にできる。

      脱ハンコで「紙の契約書」にかかるムダな印紙税を削減

      これも資金繰りを良くするトレンドの一つ。

       

      そもそもデジタル化は経営の効率化につながるため、人件費を含む経費の削減になり、浮いた分だけ資金繰りが良くなる。

       

      そのなかでも脱ハンコは、簡単に言えば「紙の書類のやり取りをやめる」ということなので、紙の契約書などを作ったり、保存しておいたりするコストが抑えられる。

       

      契約書をやり取りするために、ハンコを押した契約書を送ったり、ハンコを押して返信したりしてもらっている会社もあるが、そのための郵送代や封筒代もいらなくなる。

       

      また、電子契約であれば収入印紙がいらない。つまり、PDFなどで作った契約書は印紙税の節約になる。

       

      なぜ収入印紙がいらず、印紙税が非課税になるのか。

       

      その理由は、印紙税が紙の書類を作成する時に掛かるものだから。電子契約書は書類の一種だが、紙ではないので印紙税が非課税になるわけ。

       

      ちなみに、契約書を保存しておくためにプリントアウトしたとしても、その書類は課税対象にならない。

       

      印紙税は契約書の原本に課せられるものであるため、電子上で契約が結ばれていれば、その書類のプリントアウトは原本ではなくコピーとみなされる(もちろん、契約前の契約書をプリントアウトし、ハンコを押して使う場合は印紙税が必要になるけどね)。

       

      契約書のやり取りが多ければ多いほど、印紙税負担は大きくなる。慣例的に収入印紙をペタペタ貼っていてはいけない。時代はデジタル。世の中は脱ハンコ。トレンドを踏まえて不要な納税は減らそう。

       

       

      菅原 由一

      SMGグループ CEO

      SMG菅原経営株式会社 代表取締役

      SMG税理士事務所 代表税理士

       

       

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        ※本連載は、菅原由一氏の著書『激レア 資金繰りテクニック50』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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