(※写真はイメージです/PIXTA)

会社が潰れる本当の原因は、赤字や債務でなく「資金不足」です。資金不足に陥らないためには、助成金や補助金、借金などの様々な資金繰り手段はもちろんのこと、節税などによって手元のキャッシュを減らさない工夫も欠かせません。そこで本稿では、資金繰り専門税理士の菅原由一氏が「医療費控除の活用」「退職金の払い方」「謝礼を渡す際の一工夫」について解説します。

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    「治療目的のマッサージ」なら医療費の対象

    確定申告では、10万円を超えた分の医療費が医療費控除になる。

     

    医療費に含まれるのは、治療、療養にかかった医療費や、治療、療養に必要な医薬品の購入代金など。市販の風邪薬なども対象になり、医師の処方があれば、湿布、漢方薬、サプリメント、目薬なども含まれる。

     

    ところで、私は腰を痛めている。腰痛を治すために治療院でマッサージを受けているので、それも医療費の対象。

     

    「マッサージ代も医療費になるの?」

    「保険適用外でしょ?」

     

    そう言う人もいるけど、治療費になる。

     

    なぜなら、リラックスのためのマッサージではなく、腰痛の治療だから。

     

    保険治療(健康保険が使える治療)かどうかは関係ない。マッサージ師になにか証明してもらう必要もない。治療院で施術を受けていれば、施術であり、医療費控除が受けられる。

     

    医療費控除は所得から控除されるため、所得が多く、税率が高い人ほど節税効果は大きくなる。所得の半分くらいが税金になる人なら、所得税の還付と住民税の減額を合わせて、マッサージ代の半分くらいになる。つまり、医療費としてきちんと申告すれば、いつもの半額くらいの料金でマッサージが受けられるということ。

     

    腰が痛い。首が痛い。肩が痛い。そう思ったら、チェーン店のマッサージなどではなく治療ができるマッサージ店に行ったほうがいい。頻繁に通う人ほど医療費が10万円を超える可能性が高く、所得が多い人ほど実質的なマッサージの割引率が大きくなるのだ!

    退職金は3回払える…社員も会社もトクする仕組み作り

    未来の幹部候補を育てたい。長く働いてくれる人に報いたい。そう考えるなら、退職金を活用。

     

    退職金は、さまざまある所得のなかで控除が大きいものの一つ。このメリットを活用して、社員の手取りを増やしたい。

     

    ところで、人は何回退職金を受け取るのだろうか。

     

    通常は1回。「当たり前じゃないの?」って思うよね。しかし、社員から役員になると、その際に1回会社を辞めることになるため、その時に1回、役員を辞める時にもう1回、計2回、退職金が受け取れる。さらに、役員から出世して社長になる。社長を辞めて会長になる。すると、会長を辞めて完全引退する時に、もう1回退職金が受け取れる。

     

    つまり、社員から役員、社長(役員)から会長、会長から引退の3度にわたり、退職金が受け取れる。節税メリットが大きい所得が3回もあるということ。

     

    社員から会長まで昇り詰めるくらい会社に貢献してくれた人には、会社としても恩返ししたいと思うのが人情。

     

    給料や賞与、役員報酬は所得が増えれば増えるほど税金が高いので、それなら退職金として渡す仕組みを作って、払ってあげたほうが本人はうれしいはず。

     

    退職金として受け取ると社会保険料もかからないので、さらに本人の手取りが増える。会社も、本人と折半する社会保険料が削減できる。

     

    もちろん、退職金は控除が大きいため、税務署も「節税目的ではないか」「租税回避ではないか」と目を光らせる。

     

    常識の範囲内、節度ある節税の範囲内で、将来、役員や会長になるかもしれない社員が喜ぶ制度作りを検討してみよう。

    紹介料などの謝礼を「交際費以外」で損金算入する方法

    「ご友人を紹介いただいたら10万円の謝礼をお支払いします」

     

    住宅販売などでよくある紹介キャンペーン。

     

    ところで、この10万円は損金にできる? どの科目で落とすのがいい?

     

    紹介者に支払う謝礼は通常は交際費になる。交際費は原則として損金に算入できないが、中小企業の場合年間800万円までは損金にして良い、というのが今のルール。紹介料も営業のために使っているお金なので、経費として損金にしたほうがいい。

     

    ただ、ここで困ってしまうのが「年間800万円」という上限。紹介による顧客獲得が多い会社は、すぐに上限に達してしまう。紹介キャンペーンで使う金額が多いほど、その他の接待費用(取引先との飲食、ゴルフなど)や交際費(お中元、お歳暮など)が制限されてしまうこともある。

     

    そこで、考え方を根本から変える。紹介獲得を依頼して、その対価として報酬を支払うようにする。こうすることで、謝礼として払っていた交際費は報酬になる。支払手数料や販売手数料などとして損金に算入できるようになる。

     

    例えば、家を購入した人が「友人も住宅購入を考えている」と紹介してくれたのなら、情報の対価に支払手数料を報酬として払う。何度も顧客を紹介してくれる人には販売手数料として報酬を払う。

     

    ただし、報酬として認めてもらうためには契約書が必要。「紹介していただいた場合、成約金額のXX%のご紹介料をお支払いします」というような契約書。その業務を委任・委託するという内容の契約書を作り、そのうえで紹介してもらう。契約に基づき、委託者と受託者という関係で紹介をお願いしていることを明らかにしておくことが重要なのだ!

     

     

    菅原 由一

    SMGグループ CEO

    SMG菅原経営株式会社 代表取締役

    SMG税理士事務所 代表税理士

     

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    ※本連載は、菅原由一氏の著書『激レア 資金繰りテクニック50』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    菅原 由一

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