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リテールで勝ち筋をもたらす「4つの領域」
自社の事業と相通ずるところがあるリテールタイプや「これならめざせる」と思えるリテールタイプがあっただろうか。見つかったという企業には「おめでとう」と伝えたい。残念ながら共鳴できるリテールタイプがなかったとしたら、一刻も早く事業の見直しが必要だ。
ここに挙げたリテールタイプには、必ずしも優劣の差や持続性の差があるわけではない。そこがポイントで、互いにまったく相容れない関係であり、それぞれ顧客にとっては独特の価値があるのだ。また、どのリテールタイプも、消費者が抱く問いかけに対する答えとなっている。どのリテールタイプも、市場でしっかりと持続性のあるポジションを確保し、これがブランドの軸となる。
大切なのは、企業がめざすリテールタイプを1つに明確に絞り込み、カテゴリー内でそのリテールタイプとしての優位な地位をめざすことだ。マーケティング・業務計画を練るときは、リテールタイプとしてのポジションの強化に資するものでなくてはならない。
■新しい時代の価値を生み出す4つの領域
このリテールタイプに基づくモデルは、4つの領域に分解できる【図】。
①カルチャー
一部の小売業者にとっては、独自の魅力的な「カルチャー」を顧客に訴求し、その良さを啓蒙していく能力が、優位性を生む最大の源泉となる。カルチャーとは、すでに組織に定着している信念や慣習、成果物で構成される体系である。どういう信念を持っているのか。どのような慣習・作法を守っているのか。どのような事柄やシンボルを使って信念・慣習を表現しているのか。こういったことがカルチャー、つまりそのブランドの文化の根幹となる。
カルチャー領域で強い小売業者は、カルチャーとそれに基づく価値観を抽出してブランドのあらゆるタッチポイントに埋め込んでいく必要がある。カルチャーを売りにしたブランドが獲得するのは、単なる顧客ではない。熱烈なファン、信奉者、門弟もついてくるのだ。
②エンターテインメント
エンターテインメント性に強いブランドもある。オンライン、オフラインを問わず、五感に訴える要素を活用し、ショッピング中に物心両面で消費者を虜とりこにする。エンターテインメント性に秀でた小売業者は、顧客が購入に至るプロセスのごく微妙な部分に日夜徹底的にこだわりながら、機会あるごとに真に独自性のある魅力的な体験を生み出している。
エンターテインメント性を主軸にしたブランドは、独創性やデザインに関わるリソースに重点的に投資し、顧客の体験を継続的に構築し直している。このようなブランドにとって、商品自体は二次的なものである。商品を取り巻くように提示される体験型の作品こそが、主たる商品なのだ。
③ノウハウ
特定カテゴリーでのノウハウの強みを標榜するブランドもある。このように専門性に強みのある小売業者は、そのカテゴリーで最高水準のノウハウ、コンシェルジュ顔負けのサービスで顧客をもてなす玄関口として、体験やコミュニケーションのあらゆるタッチポイントを強化する。ベンチマークトレーニングプログラムや資格認定制度、セミナー、講座、ワークショップなどの要素を通じて、ノウハウに飢えた顧客に絶えず情報を提供できる。
ノウハウを主軸とするブランドは、スタッフ確保、人材トレーニング、さらには優れたノウハウを消費者に提供するためのツールに重点的に投資する必要がある。テクノロジーは、人間のスタッフを服従させるためにあるのではなく、スタッフのスキルや知識、能力を拡充・強化するために活用すべきだ。
④商品
美的にも機能的にも優れた商品の開発・販売にピンポイントで取り組み、独創性のあるデザインを反映した顧客体験も組み合わせ、優位性を確立する小売業者もある。
商品性を売りにするブランドが重点投資をするのは、斬新で卓越した商品プラットフォームの研究・開発やテストである。また、この商品という領域では、買収や独占を通じて、消費者が特定商品に向かうように圧倒的な影響力を行使するのも、商品性重視のブランドだ。また、市場での強大な力を背景に、消費者が最初に思い浮かべるブランドになろうとする。