(※写真はイメージです/PIXTA)

すべての企業は「体験企業」なのです。取扱商品や対象顧客の違いも関係ありません。ただ、顧客がいて、顧客が何らかの体験をする以上、それはもうすでに「体験ビジネス」なのです。ダグ・スティーブンス氏が著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)で解説します。

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    どの小売業者も「最初から体験ビジネス」

    ブランドのリテールタイプが決まったのはいいが、ここからどのように命を吹き込むだろうか。

     

    説得力にあふれ、有意義で価値があると思えるような魅力を消費者に訴求できれば、怪物企業がドームのように囲い込んでいるエコシステムに風穴を開けて、消費者が自由に出てこれるようになり、あなたのブランドが持つ掛け値なしの素晴らしさを知ってもらえる。では、どうすればいいのか。

     

    そこで、いくつか重要な現状認識から始めよう。1つめは次の点だ。

     

    ■すべての企業は「体験企業」である

     

    ビジネス書やビジネスセミナーなどでは、情熱たっぷりにいろいろな煽り文句が飛び出す。たとえば、「将来、すべての企業がデータ企業になる」といった具合だ。あるいは、「どの会社もメディア企業の意識を持て」だとか「すべての企業はテクノロジー企業たれ」といったものもある。

     

    この手の煽りは、なんとなくおもしろそうで悪い気はしないし、会議のスローガンには据わりがいいのだが、現実的にはたわごとに過ぎない。そんな言葉に惑わされたり気を取られたりしてはならない。真に受ける必要はない。そもそも、あなたの会社がアマゾンのようなデータ企業とか、アリババのようなメディア企業とか、京東やウォルマートのようなロジスティクス企業になる可能性は、限りなく小さいのだから。まずあり得ないと思っていい。

     

    だが、どの企業にも当てはまるフレーズが1つある。ご存じかどうか、自覚があるかどうかはともかく、好むと好まざるとにかかわらず、すべての企業は「体験企業」なのである。取扱商品や対象顧客の違いも関係ない。ただ、顧客がいて、顧客が何らかの体験をする以上、偶然か計画的かに関係なく、それはもうすでに「体験ビジネス」なのである。

     

    体験は、単なるおまじないではない。経験則に照らして顧客の体験内容を充実させていくことに長けた企業は、収益の面でも平均的な企業に比べて多いときは4.8%も上回っているのだ。充実した体験を提供できる企業は、やる気あふれる従業員が非常に多い傾向が見られる。

     

    まだピンとこないだろうか。セールスフォースが作成した2018年のレポートによれば、「企業が顧客に提供する体験は、製品・サービスと同じくらい重要」と回答した消費者は80%、「以前よりも簡単に取引先を変えられるようになった」との回答は76%に達している。

     

    これでは、やる気を出さないわけにはいかないだろう。

     

    何よりもまず認識しておかなければならないのは、「どの小売業者も、最初から体験ビジネス」という事実である。唯一、議論の余地があるのは、小売業者として提供できる体験のあり方だ。

     

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    ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    ダグ・スティーブンス

    プレジデント社

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