(※写真はイメージです/PIXTA)

特定のリテールタイプで優位なポジションを築き上げる力があることに加え、強力な差別化につながる2つの領域に支えられたブランドなら、パンデミック後の世界でも生き残ることができるといいます。ダグ・スティーブンス氏が著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)で解説します。

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      パンデミック後でも生き残るブランドの条件

      ■4つの領域の中から2つを選んで支配者となれ

       

      まずは、自社のDNAと相通ずると思われるリテールタイプが見つかれば、最初の難関はクリアしたことになる。カテゴリーで支配的なリテールタイプをめざすには、消費者の目に留まる明るい灯台のような存在になるだけでなく、経営幹部が方向性を見失わないように明確な方位を示す羅針盤でなければならない。

       

      とはいえ、支配的なリテールタイプの座を確保するのは、決して生易しいことではない。ここで言う「支配的」とは、模範であり、象徴であり、卓越した存在になることである。だからこそ、特定のカテゴリーなり市場なりで、消費者が最初に思い浮かべる定番の座を獲得できるのだ。

       

      むろん、リテールタイプを選ぶだけでは、長期的にブランドを維持していくことは難しい。特にパンデミック後にますます熾烈になる競争環境ではなおさらだ。リテールタイプが決まれば、組織として戦略上有益なポイントがはっきりするが、それはブランドを支える1つの脚に過ぎない。私たちがめざすべきは、がっしりとした3本脚構造である。

       

      そこで、リテールタイプという原動力に加え、先ほどの4領域のうち、2つの領域で強みを発揮する3本脚として差別化を図り、ポジションを強化することだ。支配と差別化を混同してはならない。差別化は、単に独自性あるいは違いを際立たせる要素を持つことに過ぎない。

       

      たとえば、先に紹介したようにパタゴニアは、環境保護という大義をビジネスモデルの随所に直接織り込み、「活動家」型のブランドとして他を圧倒する支配的地位を確立している。その結果、パタゴニアは、同一カテゴリーの競合各社と比較して、「カルチャー」領域では「支配的」である。

       

      一方、「商品」領域では、高品質で持続性に優れた独自の品揃えで差別化を進め、ポジションを強化している。第2にパタゴニアは、店舗で提供する「ノウハウ」領域でも、差別化を図ることに力を入れている。同社ウェブサイトは次のように説明する。

       

      また、私たちが求める(中略)パタゴニア商品の中心的ユーザーは、山や大自然のなかでできるだけ多くの時間を過ごすことが大好きな人々です。私たちはアウトドア企業なのです。見本市の当社ブースに、ワイシャツにネクタイ、サスペンダーといったいでたちの不健康そうなスタッフを何人も配置するようなことはしません。病院が受付スタッフに仕事中の喫煙を認めないのと同じことです。

       

      つまりパタゴニアは、「活動家」型としてカルチャー領域で支配的地位を追求する一方、「商品」と「ノウハウ」の2領域では差別化を図ることで、複雑な競争優位を築き上げているため、これに対抗するのは非常に難しいのである。

       

      「カルチャー」「商品」「ノウハウ」の領域を、いわば独自のレシピで融合させているため、競合他社が解析して模倣することは容易ではない。パタゴニアの取扱品目のなかには、アマゾンなど怪物企業のエコシステム内で売られているものもあるが、アマゾンがそのカテゴリーをとことん極めて本格的に勝負を仕掛けてくるとは思えない。

       

      特定のリテールタイプで優位なポジションを築き上げる力があることに加え、強力な差別化につながる2つの領域に支えられたブランドなら、パンデミック後の世界でも生き残り、辺りを怪物企業がうろついていても安心して活動できるのである。

       

      ダグ・スティーブンス
      小売コンサルタント

       

       

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        ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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