退職金2,500万円、年金月23万円で快適に暮らす“独身貴族”

松永秀樹さん(仮名・65歳)は、大学を卒業後30年以上にわたり国家公務員として働いてきました。現役時代、懸命に働いた秀樹さんの定年退職金は約2,500万円。65歳からは、毎月23万円の年金生活を送っています。

そんな秀樹さんはいわゆる“おひとりさま”です。学生時代に軽い交際経験はあったものの、社会人になってからは仕事に忙殺され、気がつけば恋愛とは無縁になってしまいました。

退職後、時間を持て余す秀樹さんの日課は、公園の散歩と図書館通いです。家の近くの公園をゆっくり歩き、ベンチに腰かけて日向ぼっこ。飽きるとその足で図書館に向かい、新聞や雑誌をめくるのがルーティンです。

毎日同じように過ごすうち、秀樹さんと同じような年齢で同じように時間を過ごす顔見知りもできましたが、会釈だけで特に会話を交わすこともなく、誰とも話さないまま1日を終えることも少なくありませんでした。

秀樹さんの平穏な日常に起きた小さな変化

そんなある日、秀樹さんがいつものように図書館で新聞を広げていると、1つの記事に目が留まりました。

「シニア世代にも広がるSNSの輪 孤独を防ぐ新たな交流」

興味を惹かれた秀樹さんは、帰宅後にさっそく自身のスマートフォンでSNSアカウントを作成してみました。

最初は、散歩中に見かけた花や図書館で読んだ本の感想を載せる程度。それでも、少しずつ「いいね」やコメントがつくようになり、なんとなく嬉しさを感じるようになりました。

そんななか、しばしば1人の女性からリアクションが届いていることに気づきました。

「いつも投稿楽しみにしています」

その女性は「裕子さん」といい、プロフィールには「40代、カフェ巡りが趣味」と書かれていました。

最初は「いいね」が多く、たまにコメントをくれる程度でしたが、勇気を出して秀樹さんが返信してみると、しだいに会話が増え、やり取りを楽しむようになりました。

「おはようございます。花の盛りは、終わりましたが、道端のサツキがきれいです」
「わあ、素敵なお花ですね!」

「読了。古い本で、読み進めるのに苦労しましたが、なかなか、興味深い1冊でした」
「この本、私も気になっていたんです。読み切ったなんて、すごいですね!」

気がつけば、秀樹さんは裕子さんの返信が楽しみになり、裕子さんを意識した投稿をするようになりました。気づかぬうちに、恋心が芽生えていたようです。