(※写真はイメージです/PIXTA)

勤勉だった会社員の兄は、仕事でトラブルを起こしてから引きこもり状態に。心配した両親は貯金に励みますが、父親が亡くなって以降、母親の財産を好き勝手に使いはじめました。弟は苛立ちますが、じつはそれ以上に、母親と兄の将来に不安を感じています。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

度重なる働きかけで兄は軟化、遺言書も「作り直し」に

もし、母親が山田さんの兄に促され、兄に有利な遺言書を作成していたとしても、法的には無効とはなりません。しかし、これまでの経緯を聞いた筆者は、この状態で相続を迎えて遺言を執行するのは、山田さんの心情的を考えてもよくないと判断しました。そのため、もう一度遺言書を作り直してもらってはどうかと提案しました。

 

遺言書はあとから作ったものが有効になります。山田さんの母親には意思判断能力があるため、まだ遺言書を作るチャンスはあります。

 

しかし、一方的に再作成すれば、いまの山田さんと同じ不満を兄が抱えることになり、トラブルの元です。そのため、兄・母親・山田さんの全員で相談することが大切であるとお話しました。

 

提案当初は兄とコミュニケーションが取れず、遺言書作成は難航しました。しかし、粘り強い働きかけて、次第に距離が縮まり、なんとかコミュニケーションが取れる程度にはなってきました。いまは母親を交え、公正証書遺言の作成を進めています。

 

「母親の資産状況も見えてきました。今のペースなら、万一母親が亡くなっても、兄はなんとかなりそうです。その代わり、私は相続放棄するつもりです」

 

山田さんは長年の疑念が晴れたためか、すっきりとした明るい表情になっていました。

不備の懸念が残る自筆証書遺言より、公正証書遺言を

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

 

遺言者が自筆証書遺言を残しているケースはよくあるのですが、内容に不備があれば無効になってしまうことから、作成には細心の必要を払う必要があります。

 

その点からも、公正証書遺言がお勧めです。公正証書遺言なら、改ざんや紛失のリスクがなく、遺言者に障害や怪我等があっても作成でき、遺言者が亡くなったあとは裁判所の「検認」も不要になるなど、メリットはたくさんあります。

 

デメリットととしては、費用がかかる、手間や時間かかる、証人の確保が必要になる、といったものがあげられます。

 

とはいえ、これまで扱った多くの相続問題を考えると、デメリットを考慮しても、公正証書遺言の仕組みのほうがメリットは大きいといえます。

 

もし遺言書の準備をお考えの場合は、迷わず公正証書遺言の作成をお勧めします。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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