不動産の共有はいいことはない!
相続の現場でトラブルの要因となっているのが、「不動産の共有」です。都内にお住まいのAさん(70代・女性)が、娘さんと一緒に相談に来られました。
Aさんがお住まいの自宅は、亡夫の実家です。Aさんは嫁いできた当初から、夫の両親と同居してきました。
夫の父親が亡くなった際、土地と建物は4人きょうだいで等分に相続されました。Aさんは義父(夫の父親)の相続には関係者ではなかったため、詳しい経緯は把握していませんでした。
その後、夫は15年前に亡くなり、Aさんが住む家はAさんと2人の義妹による共有名義となりました。
都内一等地でも起きている現実
義父が亡くなった当時、すでに義母も他界していたため、家に住んでいたのはAさん夫婦と一人娘の3人でした。そのまま亡夫が単独で相続していれば問題はなかったのですが、司法書士の勧めによるものか、亡夫と弟、そして2人の妹の計4人名義とされました。
弟も妹たちもすでに独立して家を離れていたにもかかわらず、それぞれ4分の1ずつの持ち分として相続登記が行われたのです。
その後、弟が持ち分を亡夫に買い取ってほしいと申し出たため買い取り、結果的に亡夫が2分の1、義妹がそれぞれ4分の1ずつの共有名義となりました。
さらに夫が亡くなった際には、Aさんがその持ち分を相続したため、現在はAさんが土地の2分の1を所有しています。
建物については、夫が建て替えた際に夫の単独名義となっていたため、現在はAさんの名義になっています。築30年を超え、建物自体の価値は下がっているものの、近年は土地の評価が上昇している状況です。
Aさんは70代となり、今後どのようにすべきかアドバイスを求めて相談に来られました。
土地は路線価ベースでも1億円を超える可能性があり、決して小さくない資産です。つまり、「価値があるがゆえに問題が深くなる」典型的なケースと言えます。
対立する2つの立場
このケースを難しくしている最大の要因は、「共有」であること以上に「意向の対立」にあります。
Aさんは、これまでの生活の延長として、現在の自宅に住み続けることを強く望んでいます。そこは単なる不動産ではなく、長年の暮らしが積み重なった生活の場だからです。
一方で、義妹のうちの一人は、共有状態を解消し、不動産を売却して現金で分けることを望んでいます。資産としてみれば、それは合理的な判断とも言えます。
しかし、この考え方の違いはやがて感情的な衝突へと発展していきます。実際に、「早く出ていってほしい」という強い言葉が投げかけられる状況にまで至りました。
住み続けたい人にとっては「生活の場」であり、売却を望む人にとっては「換金できる資産」です。この認識の違いが、相続問題を一気に深刻化させるのです。
