(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後も働き続けることは、いまや珍しい選択ではありません。生活費や住宅ローン、子どもの教育費、老後資金への不安から、60歳以降も仕事を探す人は少なくありません。しかし、同じ「働く」でも、現役時代と同じ待遇や役割が用意されているとは限りません。

「まだ働ける」と思っていた…定年後に待っていた再就職の壁

森田さん(仮名・60歳/男性)は、昨年、長年勤めた物流会社を定年退職しました。

 

本来なら、再雇用制度を利用して65歳まで働くつもりでした。ところが、会社の業績悪化や拠点再編の影響で、希望していた部署での継続勤務は難しくなりました。別の職種なら可能性はあると言われたものの、通勤時間や体力面を考えると続けられそうにありませんでした。

 

「定年後も当然同じ会社で働けると思っていたんです」

 

退職金はありましたが、住宅ローンの残債や妻の医療費、まだ独立前の次男への支援を考えると、すぐに完全リタイアできる状況ではありませんでした。

 

森田さんは、ハローワークや求人サイトで仕事を探しました。

 

しかし、60歳を過ぎてからの再就職は簡単ではありませんでした。管理職経験はあっても、現場で求められるのは即戦力の事務処理能力や体力、柔軟な勤務シフトです。

 

ようやく採用されたのは、商業施設のバックヤードで商品管理を行うパートの仕事でした。時給は1,300円。週4日、1日6時間勤務です。

 

「働けるだけありがたいと思う一方で、正直、現役時代との落差はありました」

 

厚生労働省『令和6年 高年齢者雇用状況等報告』では、65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%とされています。ただし、その内訳は継続雇用制度が多く、定年前と同じ仕事・賃金が保障されるという意味ではありません。

 

新しい職場では、森田さんより20歳以上若い社員が指示を出していました。入荷商品の確認、端末への入力、在庫棚の移動。覚えることは多く、端末操作にも戸惑いました。

 

ある日、処理を間違えた森田さんに、若い社員が淡々と言いました。

 

「まだ慣れないんですか?」

 

強い言葉ではありませんでした。けれど、その一言に森田さんはうつむいてしまいました。

 

「自分が“できない”人間になったような気がしました」

 

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