(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢男性のもとに入った1本の電話は、疎遠な長男からの資金援助の要請でした。男性は、広い家に住み替えたいという長男へ贈与を決意する一方、近居の長女に不動産をすべて相続させるとの遺言書を作成します。男性の行動には、長年積み重なったある思いがありました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

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疎遠な長男一家・親密な長女一家

今回の相談者は、神奈川県在住の70代の佐藤さんです。佐藤さんは公務員を定年退職後、現在は悠々自適の隠居生活です。佐藤さんの一族はこの近辺の地主であり、佐藤さんも広い自宅敷地を相続しています。また、これまでの生活も堅実で、老後資産の心配はありません。

 

佐藤さんの妻は15年前に亡くなりました。また、佐藤さんには長男と長女の2人の子どもがいます。

 

長女は短大を卒業後すぐに嫁ぎましたが、生まれた子どもたちの年齢が近く、子育てが大変だったことから、妻が実家の近くに呼び寄せようと提案しました。賛成した佐藤さんは、自宅から数分の場所に長女一家の暮らす家を購入しました。

 

長男は勤務先の関係で埼玉県に暮らしています。実は佐藤さんは長男とあまり折り合いがよくありません。妻が存命中は、長男と連絡を取り合っていましたが、妻が亡くなって以降、ほとんど交流が途絶えている状況です。

 

しかし、近居の長女一家が頻繁に訪問してくれるため、寂しさや不安はありません。

要求ばかり突き付け…あてにならない長男にウンザリ

先日、ずっと音沙汰なしだった長男から突然連絡がありました。話を聞くと、自宅購入のための資金を援助してほしいとのことです。長男は結婚が遅かったのですが、子どもたちが成長して家が狭くなったため、広いところへ移りたい、配偶者の両親と同居する予定もある、ということでした。

 

話を聞いた佐藤さんは、長男には相続財産の前渡しとして自宅の購入資金を贈与し、自宅と長女が住む家は、長女に相続させようと決意しました。

 

しかし、佐藤さんには心配なことがあります。相続のとき、長男が多くの財産を要求し、長女と揉めはしないかということです。長男の妻ははっきり自己主張するタイプで、結婚後、まだ数回しか顔を合わせていないにもかかわらず、「私たちは別世帯です。家と家のお付き合いは致しません」といい放つなど、衝撃を受けたことがありました。また、佐藤さんの妻が亡くなったとき、相続財産について遠慮のない質問を繰り返すなど、正直、苦々しく思っている部分もあります。

 

佐藤さんは、自分亡きあと、長女を守るにはどうすべきか整理しておきたいと考え、筆者の事務所を訪れたのでした。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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