(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢男性のもとに入った1本の電話は、疎遠な長男からの資金援助の要請でした。男性は、広い家に住み替えたいという長男へ贈与を決意する一方、近居の長女に不動産をすべて相続させるとの遺言書を作成します。男性の行動には、長年積み重なったある思いがありました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

遺言書の作成で、尽くしてくれる長女を守る

筆者は状況をくわしく聞いたうえで、公正証書遺言の作成を提案したところ、佐藤さんも進めてほしいと希望しました。筆者はすぐに着手し、長男には預金の一部と株券、残りの全財産は長女へ相続させ、遺言執行者も長女とする内容の遺言ができあがりました。この内容なら、佐藤さんの自宅と長女の自宅の両方を長女に相続させられるため安心です。相続争いで長女が家を追われる心配もなくなります。

 

長男に相続させる預金は、退職金の残りのほか、長年の投資の成果として蓄えてきたものです。手持ちの生活費にはゆとりがあるため、万一入院等の出費があっても、長男の相続分が減る可能性は低いでしょう。これできょうだい間のトラブルのリスクが減らせます。

 

「長男にはすでに自宅の購入資金を贈与していますが、あの遺言を用意しなければ、長女からすべてを取り上げかねません。長女はおとなしい性格なので、あの夫婦にはとても太刀打ちできないと思います…」

 

佐藤さんはひとしきり、長年胸にしまっていただろう長男夫婦への思いを、筆者と筆者の会社のスタッフに語ったあと、頭を下げてお帰りになりました。

遺言がなければ、遺産分割は法定割合が基準に…

佐藤さんのようなケースはしばしば見られます。懸念を払しょくするには、やはり遺言書の作成がいちばんだといえます。贈与を相続財産の分与とする場合、本人にそれを伝えておくほか、遺言書にも明記しておくことが大切です。遺言があれば、遺留分は法定割合の半分となります。もし遺言がなければ、遺産分割は法定割合が基準となります。

 

日頃より、一部の相続人が財産に執着を見せるような言動を見せている場合、相続時に要求をエスカレートさせ、揉め事に発展する可能性があります。トラブルを予防するためにも、遺言書で先手を打っておくことは非常に重要だといえます。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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    本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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