(※写真はイメージです/PIXTA)

キャリアも家庭も順調に築いてきた姉と、離婚してひとり暮らしを続ける妹。余命宣告を受けた母親との貴重なひとときに、妹は姉への不満を炸裂させます。しかし、いつも妹をかばっていた母親が激怒してしまい…。限られた時間のなか、円満な着地は探せるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

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母がずっと気にかけてきた「不安定な妹」

今回の相談者は、50代会社員の山本さんです。高齢で余命宣告を受けた母親の相続と、その後の分配について心配があると、筆者のもとを訪れました。

 

山本さんの母親は80代で、父親はすでに鬼籍です。きょうだいは妹がひとりいます。母親は父親から相続した都内のマンションでひとり暮らしをしていますが、長年患ってきた病気が再発し、去年余命宣告を受けています。母親はいずれこうなるものと覚悟ができており、いまも変わらず穏やかに過ごしているということです。

 

山本さんは外資系金融会社を渡り歩いてキャリアを磨いたキャリアウーマンで、夫は最初の就職先の同僚で同業という、いわゆるパワーカップルです。高校生の子どもが2人います。

 

「父親が亡くなったときは、税金の関係で母親がすべてを相続しました。しかし、母親の相続となると、いろいろ懸念がありまして…」

 

山本さんの母親の財産は、築古となった自宅マンションのほか、やはり築古の賃貸アパート1棟、数千万円の預貯金です。ざっと計算したところ、それなりに相続税が発生するものの、預貯金で支払える範囲とのこと。母親は年金と不動産収入で、生活にゆとりがあります。

 

山本さんのいちばんの心配は妹のことでした。妹は大学を卒業後、父親の勧めでお見合いして結婚しましたが、数年で離婚。子どもはいません。その後、何度か転職しながら、いまは中小企業の経理部門でパートをしています。

 

妹は父親が亡くなって以降、山本さんや母親に激しく不満をぶつけてくるようになったそうです。

 

母親は泣いたり怒ったりを繰り返す妹を心配し、そばについて慰めるだけでなく、山本さんに病院へ連れていくよう懇願しました。山本さんもあらゆる伝手をたどって医師を探し回りました。

 

治療が奏功し、ここ数年は落ち着きを見せはじめた妹ですが、まだフルタイムの勤務は難しく、不安定な状態を見せるときもあります。母親は妹を心配し、たびたび生活費を渡しています。山本さんも、母親ほどの頻度ではありませんが、援助することがあります。

不安定な妹に、財産をそのまま渡すのは心配

「妹の現在の病状から、古くなった不動産の管理や運用は厳しいと思います。それも含めて、まずは私がいったん引き受けることで、母親も納得していたのですが…」

 

ところが妹は最近になって、母親の財産はすべてもらうといいだしたというのです。

 

「妹は〈自分の人生がこんなになったのは両親と姉のせいだ、責任を取ってもらう〉といって聞きません。私には仕事も家族もあるので遺産など必要ないはずだといっています。〈昔からお姉ちゃんはチャッカリいいところばかり取って、私はずっと我慢してきた〉と…」

 

しかし、今度は母親が怒ってしまったといいます。


「親族で母の家に集まり、食事会をしていたら、妹がまた騒ぎはじめたのです。そうしたら、いつもなだめ役の母親が激怒してしまって…。〈みんながどれだけあなたに振り回されたか、わかっているの?〉と、妹を追い出してしまったんです。大切な家族の時間が台なしになってしまいました…」

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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