体の弱い妻の両親と同居し、長年サポートしてきた夫婦。感謝した妻の父親は、妻に有利な遺言を残します。一方で、親族と折り合いの悪かった妻の妹は孤立無援状態に。そのまま疎遠になりましたが、年月が経ち、妻が高齢者施設に入所したことを知り、妻の妹が動き始めます。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。
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高齢夫婦が暮らす邸宅は、妻の父から受け継いだもの
今回の相談者は、70代の長谷川さんです。長谷川さんは都内の閑静な住宅街に暮らしています。ゆったりと広い戸建て住宅は、もともと長谷川さんの妻の実家で、二人姉妹の長女である妻が受け継ぎました。
妻の父親は仕事中のケガが原因で足が不自由となり、また、母親もあまり体が丈夫でないため、長谷川さん夫婦は20年以上同居してサポートしてきました。妻の両親は長谷川さん夫婦に感謝し、妻の父親は、妻に自宅を含む財産の多くを残す旨、遺言書を書いてくれたのです。妻の両親が相次いで亡くなったあと、長谷川さん夫婦は妻が相続した家に住み続けました。
それから時は流れ、長谷川さん夫婦も高齢となりました。半年前、足腰が弱った妻が転倒し、それをきっかけに高齢者施設に入所することになったため、いまは長谷川さんが自宅で独り暮らしをしています。長谷川さん夫婦には子どもがいません。
長谷川さんの妻の妹は、両親との仲があまり円満ではありませんでした。また、妻の父親が、長女である妻に財産を大きく振り分けた遺言書を残したため、その内容に不満を抱いたことで諍いにもなりました。
妻の父親の葬儀後、親族が集まった席で、妻のおじおばたちは「たとえ遺言書がなくても、同居して介護を行ってきた長女が財産を相続するのは当然だ」と口々に言い、妻の妹は孤立してしまいました。そのため、父親が残した遺言書通り、母親の宝飾品の一部と、父親が遺言で指定した預金数百万円を受け取ったのみで、以後は疎遠となっていたのです。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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