娘たちを独立させ、夫を見送った60代女性。不動産収入と年金で生活不安はありません。しかし、広い自宅敷地が目を引くのか、サブリース会社の営業が引きも切らない状態です。しつこい営業トークを言い負かそうとあれこれ調べるうち、自身の将来的な課題が見えてきました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。
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ひとり暮らし60代の女性の家に、サブリース会社が日参
今回の相談者は60代の鈴木さんです。結婚以降、夫と3人の子どもを支える専業主婦として家を切り盛りしてきました。末っ子が就職のために家を出て以降、夫婦でのんびり暮らしていましたが、3年前に夫が急病で逝去。以後はひとりで生活しています。
自宅は神奈川県で、200坪弱の広々とした敷地です。自宅不動産は鈴木さんが夫から相続し、いまは自宅敷地の半分を貸し駐車場にしています。年金と駐車場の収益で、生活の不安はなく、趣味の絵画教室に通ったり、友人とホームパーティを楽しんだりしています。
しかし、広い自宅で、鈴木さんは大変うっとうしい思いをしています。それは、所有地でサブリースのアパート経営を勧める不動産会社の営業です。
電話も訪問もその都度断っているのですが、ある日、これまで何度も断ってきた営業マンと、ついに玄関先で押し問答となってしまいました。
「営業マンの人は、このままでは相続税が大変だ、お子さんたちに財産が残らないかもしれないから、対策が必要だと、不安を煽るようなことばかりうんです。だから、どれくらい相続税かかるのか、プロにしっかり調べていただきたいと思って…。そして、あの人たちにハッキリ言い返してやりたいわ」
鈴木さんは、疲れといらだちを隠せない様子でした。
後日、筆者が鈴木さんの自宅を訪ねて評価を行ったところ、基礎控除内に収まる範囲で、アパート建築をするような対策は必要ありませんでした。
相続税はすべての人に必ず発生するものではありません。法律で定められた「基礎控除」を超える分についてのみ課税されます。つまり、相続財産の金額が基礎控除内に収まるなら、相続税の支払いは不要なのです。
「土地があればだれにも高額な相続税がかかって対策が必要だと思っていたのですが、相続税がかからないこともあるのですね」
鈴木さんは、ホッとした表情を見せました。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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