(※写真はイメージです/PIXTA)

融資を受ける最大のチャンスは、「創業前」です。ただし、融資を申し込む前に、まずは「トータルで資金がいくらあれば、事業の立ち上げが可能か?」ということを押さえておかなくてはいけません。事業にかかる資金は、創業時にかかる「設備資金」と、その後にかかる「運転資金」の2つです。開業資金を見積もるうえで押さえておくべきポイントを見ていきましょう。

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「設備投資のある会社」のほうが多く借りやすいワケ

設備資金と運転資金の2つの事業資金では、借りやすさに大きな違いがあります。

 

どちらが多く借入がしやすいかというと、前者の設備資金です。別の言い方をすれば、設備投資がない会社は、創業時に資金を多く借りにくいというのが実態です。

 

同じ事業に必要な資金なのになぜ差があるのかというと、理由はシンプル。設備投資のほうが、使い道が明らかだからです。

 

内外装費やテナント契約金は、見積もりの提出が求められるため、自ずと使用用途・金額も明確になります。一方、創業後にかかる仕入れ、人件費や外注費、広告宣伝費などは、業績次第で増減するため、当初の想定より大きく変わってくるケースもあります。

 

金融機関に融資を受ける際には、「何にいくら使うために借りるのか」の根拠が必ず求められ、使途が不明なものに対しての融資は認められません。

 

大前提として、設備資金にせよ運転資金にせよ、事業のために必要なお金しか借りることはできません。投資や私的な用途での融資は不可です。

 

よって、創業から時間を経て「業績が好調」「手元資金が潤沢にある」といった例外を除けば、上限額の範囲内で使途に合わせて必要かつ妥当な額だけ融資を受けられるというのが原則です。

設備資金を見積もるうえでのポイント

■「世間の相場観」と「経営者自身の経験値」を踏まえて「妥当な額」を検討

では、設備資金を見積もるうえでのポイントを見ていきましょう。

 

【1. 事業を始める際に必要であること】

設備資金は開業前、あるいは開業直後に購入にあてるのが一般的です。

 

【2. 設備資金の支出の裏付け資料を用意】

内外装費や店舗の保証金などは見積書を用意しましょう。備品などは、ECサイトなどの価格表でも構いませんので、何か裏付けとなる資料を添付するのがベターです。

 

金融機関によっては、領収書の提示、支払いも融資の入金口座からの振込みが条件となります。

 

【3. 設備投資の効果を示す】

投資によって、その資産が売上につながる根拠が必要となります。高額な医療機器や最新の機械設備、ソフトウェアなどを購入する場合は、その効果を分かりやすく示す資料を別途用意するようにしましょう。

 

【4. 資産ごとの金額の妥当性を示す】

世間の相場を大きく超えるような設備投資を見積もっても、そのとおりに融資を受けるのはハードルが高くなります。

 

融資担当者は、数多くの案件を見ていますので、世間の相場観とも照らし合わせ、金銭的に妥当なのかを判断します。

 

例えば、内装工事については、業種によって異なることもありますがおおよそ坪単価30~50万円が妥当とされています。それよりも内装費を高く見積もるなら、なぜその必要があるのかを説明する必要があり、説得力が求められます。

 

妥当な額は借りる人の属性によっても異なります。例えば同じ飲食店を開く場合でも、星付きのレストランで修業し、年収1000万円程度の総料理長が好立地で内外装に凝った高級レストランを開くのと、脱サラの初心者が立ち飲み屋を開くのでは、設備投資プランも変われば、必要と認められる資金も変わってきます。融資額の目安も当然、変わってきます。

 

もちろん、自己資金の額によって融資額も変わりますが、経験値に沿わないような家賃が高いテナントを借りようとしてもリスクが高いと判断され、希望する融資額が認められないケースが出てきます。ターゲットとする顧客層や想定メニュー、客単価との整合性にも留意する必要があります。

 

■いい店舗物件は「仮押さえ」したうえで融資に臨む

また、融資を申込む際には、開業地、店舗ビジネスならば借りる店舗が決まっていることが大前提となります。

 

しかし、首都圏ではいい物件の争奪戦は熾烈を極め、立地によっても保証金や家賃が大きく異なります。自己資金が潤沢でなく、開業資金の多くを融資でまかないたい場合は、まずは専門家の助けも借りながら自分がどの程度の借入ができるかどうか目安をつけてから、動くほうが効率的といえます。

 

さらに、融資が決まる前に、物件を押さえておきたい場合、まずは仮契約、あるいは必要に応じて手付金だけ打っておきましょう。融資が決まってから契約という段取りにしておけば、万が一、融資がうまくいかなかった場合のリスクを抑えることができます。

 

公庫から融資を受ける場合には、融資が確定したあとに、物件の契約をしてもよいのですが、民間の金融機関から融資を受ける場合には、すでに物件の契約をしていなければ基本的に融資を受けることはできません。

 

100%融資に成功する! という完璧な準備をしてきた方であればよいのですが、融資に少しでも不安がある方は、まずは物件を仮押さえ(仮申込み)をしていただき、融資が確定してから不動産を契約すべきでしょう。つまり、リスクを軽減させて進めたい! という方は公庫から資金調達するという選択肢しかありません。

 

■設備資金は「計画通りの使い道」にあてることが大原則

最後に注意点として、民間の金融機関の場合、借りたお金が振込まれる前に、振込用紙に記載させられ、融資が受けられた瞬間に、設備を購入する予定の会社へ直接振込まれます。

 

やっぱりこの設備は不要だった! とならないようにしっかり計画してください。設備資金に対する融資について、民間の金融機関に比べ、公庫は厳格ではないため、設備の購入先の業者の変更も可能ですし、想定よりも多少安く購入できたとしても問題がないこともあります。ただし、基本的には、計画どおりに設備を購入しなければならないと考えてください。

次ページ「運転資金」は見積もり不要だが…上限額は?

※本連載は、田原広一氏の著書『賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

資金調達のノウハウが知りたい経営者、必読!  起業の喜びも束の間、会社の存続をかけ資金繰りに頭を悩ます日々…。創業から1年以内に約3割の企業が廃業するといわれているなか、生き残るために必要な融資の知識とその活用…

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