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開業するために必要なお金はいくら?
融資を受ける前に、押さえておくべきポイントがあります。それはトータルで資金がいくらあれば、事業の立ち上げが可能かということです。
融資を受けるにせよ、自己資金を貯めるにせよ、ゴールの目安を見定めるのが先決です。まずはざっくりと世間の相場を見ていきましょう。
公庫の「2020年度新規開業実態調査」によると、開業資金自体は減少傾向にあります。
平均は989万円ですが、500万円未満が全体の40%超を占め、約30%が500~1000万円未満で独立開業を実現しています。
無論、必要となる資金は業種ややり方によっても大きく異なりますが、見積もっていくうえで知っておきたいのが事業にかかる資金には2つのタイプがあるということです。
創業時にかかる設備資金と、その後にかかる運転資金です。
両者は資金の性格が違えば、審査の際の基準も異なります。融資を申込む際に提出する「創業計画書」(あるいは事業計画書)では、2つの資金を明確に区別し、それぞれ必要な額と内訳を記入しなければなりません。
審査では額に関して具体的な裏付けも求められますので、まずはそれぞれの定義を押さえておきましょう。
<設備資金の定義>
創業時の設備投資に必要な資金、会計上では「(固定)資産」に位置付けられるものです。資産には有形(形のあるもの)だけでなく、無形(形のないもの)も含まれます。具体的には、不動産初期費用(テナントの契約金)、店舗の内装・外装費、機械設備、ホームページ作成費用、パソコン、電話、机、その他備品などが挙げられます。
<運転資金の定義>
会社や事業を回していく(運転していく)うえで継続的にかかる費用。設備資金に該当しない費用になります。具体的には商品仕入、人件費、外注費、広告宣伝費、地代家賃、消耗費などです。 業界別にかかる費用の内訳を見ていくと、飲食業ならば「厨房機器や調理器具」「店舗の内外装費用」「店舗の契約費用」などが設備資金。その後、店舗を経営していくうえで必要な運転資金としては、「人件費」「仕入れ費用」「毎月の家賃」などが挙げられます。
これらを合算して、飲食店の開業資金としては平均して1000万円程度、同じく店舗が必要となる美容室の場合、500万円程度から開業可能ですが、シャンプー機器などに資金をかけると3000万円程度かかるときもあります。
医院の場合も診察に必要な機器を購入すると、最低でも1000万円、高価な機器に多額な費用を投資した場合、1億円程度かかるケースもあります。
つまり、設備投資をどれだけするかで、必要な資金の額は大きく変わってきます。
融資審査に受かるには、希望借入額の「妥当性」が重要
それぞれの費用項目を区別するとともに、大前提となる注意点が「設備資金は設備の購入、投資にしか使用することができない」ということです。
開業資金がかさむ店舗ビジネスで時折見られるのが、内外装費といった設備投資に費用をかけ過ぎて、開業後の運転資金が足りなくなってしまうケースです。
設備資金と運転資金では、設備投資のほうが高額の借入がしやすくなります。ならば設備資金を実際に使う金額よりも多めに借りて、運転資金が足りなくなったらそっちに回せばいいと思うかもしれませんが、残念ながら基本的には認められません。
また、運転資金については目安の金額が決まっている点にも注意が必要です。
創業時には「オシャレな店にしたい」「最新の設備を入れたい」と夢がふくらむままに、コストの設定も跳ね上がりがちですが、こと融資の審査に関しては、自己資金の額や経験値によって予算の“妥当性”が重視されます。
あまりに借入の希望額が妥当な金額よりかい離していると、計画性がないと判断され、1円も融資が受けられないこともあります。
相場より高い、あるいは身の丈に合わない設備投資を見積もっても、売上アップに結びつくという説得力あるストーリーがなければ、減額される、あるいは融資自体がNGとなるリスクが高いということも押さえておきましょう。
田原 広一
株式会社SoLabo 代表取締役
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