(※写真はイメージです/PIXTA)

現在、「両利きの経営」に注目が集まっているといいます。両利きの経営とは、簡単にいうと既存の主力事業以外にも積極的に新規事業に取り組みましょうという経営論です。ただ新規事業を成功するのは至難の業です。どのように取り組んでいけばいいのでしょうか、著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で明らかにします。

既存事業と新規事業は、VSRプロセスで進化

両利きの経営では、組織進化のVSRプロセスが重要であると論じられています。

 

まず、「V」はVariation(多様性)のことで、新規事業を成功させるには、いろいろなことを試して、うまく行ったものを残すというアプローチを取る必要があります。既存事業は、すでに一定の成功を収めている事業ですが、新規事業はまだ成功するかどうか分からないですから、たくさんのことを試してみる必要があります。ユニクロの柳井さんも、「一勝九敗」と言っている位、新しいことは成功確率が低いものなのです。

 

企業内で起業家を育てるために新規事業の企画指導を行ったりしていると、既存事業で出世した役員が出て来て、成功確率が低いと言って、没にしてしまうケースが多くあります。おそらく、仮にそれを通して、後で失敗した責任を問われたくないという考えからでしょうが、そういう発想をしていると、このVariationは担保されません。リスクは出来る限り避けつつも、いろいろなチャレンジはやってみるべきなのです。

 

次は、「S」、Selection(選択)です。たくさんトライアルした中からいいものを選び(選択)、選んだものについて経営資源を集中投入し、成長させます。農産物などでも、芽が出て苗がある程度伸びてきた段階で、間引きをして、大きくなる可能性の高い苗を残します。これはそのSelectionと同じ考えです。将来の成長性が期待できる事業にリソースを振り向けるという考え方は、経営戦略の初期の理論であるPPM(Product Portfolio Management)にも見られます。

 

ただ、日本国内では、変な平等主義があって、止めさせるのは可哀そうだという心情論に走ってしまいがちなので、注意が必要です。ダメだったらまた別のことでやり直しをすればいいことで、そうした失敗を許容する度量、カルチャーが必要です。

 

最後の「R」はRetention(維持)ということで、選んだ既存事業がなるべく長く企業を支えられるように、事業内容を深化させていきます。

 

深化させるためのキーワードは、以下となります。

 

①予測可能性
市場動向や顧客ニーズ、競合他社の動向等がある程度予測が付くと、投資計画や予算・利益計画の精度が高まります。予測可能性が高いほど生産性や効率性を上げ、より少ないインプットでより多くのアウトプットを出すことができます。

 

②安定性
受注や売上の変化が大きいと、それに対応する人手やコストが掛かります。安定性が高いほど、コストを抑えやすくなります。

 

③効率性
経験曲線という考え方がありますが、より多く生産するほど、いろいろな工夫をして生産コストが下げられるというものですが、効率性を高めることができます。

 

④バラツキの削減
品質管理は、バラツキを減らすために行います。バラツキが少ないほど良品が多くなり、無駄が省けます。

 

⑤コントロール
PDCAは経営管理=コントロールの手法の一つですが、予測可能性が高いほど、高い精度でPDCAを行うことができます。

 

ポイント
VSRプロセスで組織を進化させる

 

井口 嘉則
株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット 代表取締役
オフィス井口 代表

 

 

※本連載は、井口嘉則氏の著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

事業計画書の作り方100の法則

事業計画書の作り方100の法則

井口 嘉則

日本能率協会マネジメントセンター

経営環境が激変する最悪シナリオを乗り切る「事業計画書」の立て方・作り方とは? 「ビジョン・戦略立案フレームワーク」で何を/どの段階で行うかがわかる“これからの”実践教科書。 コロナ禍にあっても、事業計画の立…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録