(※写真はイメージです/PIXTA)

現在、「両利きの経営」に注目が集まっているといいます。両利きの経営とは、簡単にいうと既存の主力事業以外にも積極的に新規事業に取り組みましょうという経営論です。ただ新規事業を成功するのは至難の業です。どのように取り組んでいけばいいのでしょうか、著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で明らかにします。

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両利きの経営で、成長を続ける

従来、既存事業と新規事業は別物として扱われることが多かったのですが、近年、両方ともうまくできるように取り組むべきであると言われるようになってきています。

 

米スタンフォード大学のチャールズ・A・オライリーらは、企業には漸進的イノベーションで既存事業を強化しつつ(深化)も、従来とは異なるケイパビリティが求められる新規事業を開拓して(探索)、変化に適応する両利き(ambidexterity)の経営が必要であると説いています。

 

両利きというのは、既存事業が利き手(例えば右手)だとしたら、新規事業は左手となるのですが、経営者は、苦手な新規事業にも取り組んで、右手も左手も両方とも利き手として使えるようになっていなければならないという意味です。

 

技術革新による事業環境変化が激しいため、既存事業だけを得意にしていても、陳腐化リスクが高いため、新規事業にも積極的に取り組む必要があるということです。

 

例えば、小売業では、リアルな店頭販売が主流でしたが、近年はネット通販の台頭により、ネットビジネスでもうまくやらなければならなくなりました。

 

そして、この両利きの経営が成り立つためには、以下の4要素が重要であると言われています。

 

(1)戦略的意図

経営者による戦略的な考え方、例えば、新規事業を既存事業にも役立てるとか、新規事業が立ち上がってくるまで既存事業でカバーする等、両者の繋がり、関係性に関する考え方が重要です。

 

(2)経営陣の関与と支援

一般に新規事業には産みの苦しみがありますから、経営陣の積極的な関与が必要です。必要に応じて他社との提携交渉を行ったり、既存事業からの協力・応援を取り付ける必要もあります。

 

(3)両利きのアーキテクチャー

アーキテクチャーというのは、設計基盤のようなものを指しますが、ここでは、既存事業・新規事業それぞれを成り立たせる経営基盤のようなものを指します。小売業で言えば、リアルとネットの両方で使える商品データベースがそれにあたります。

 

(4)共通のアイデンティティ(ビジョン・価値観・文化力)

社内で新規事業と既存事業が対立しあっているようではうまくいきませんから、会社のビジョンとしては両方を包含し、社内の価値観や文化も、既存事業の生産性・効率性を重視しつつも、新規事業によるトライアル&エラーも許容するようなものである必要があります。

 

出所:「両利きの経営」チャールズ・A ・オライリー、マイケル・L・タッシュマン著、入山章栄監訳、東洋経済新報社より
出所:「両利きの経営」チャールズ・A ・オライリー、マイケル・L・タッシュマン著、入山章栄監訳、東洋経済新報社より

 

ポイント
既存事業も新規事業も両利きで成功させる

 

次ページ既存事業と新規事業は、VSRプロセスで進化

※本連載は、井口嘉則氏の著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

事業計画書の作り方100の法則

事業計画書の作り方100の法則

井口 嘉則

日本能率協会マネジメントセンター

経営環境が激変する最悪シナリオを乗り切る「事業計画書」の立て方・作り方とは? 「ビジョン・戦略立案フレームワーク」で何を/どの段階で行うかがわかる“これからの”実践教科書。 コロナ禍にあっても、事業計画の立…

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