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「ブランドのためのメディアチャネル」の時代
アレキサンダーは、実店舗のスペースに対する考え方が変化していることに気づいていた。ブランド各社、とりわけデジタルネイティブのブランドやD2C系のブランドは、実店舗を販売コストと考えず、むしろ効果的なマーケティング費用と捉え始めていた。アレキサンダーは「見方を変えて、実店舗というスペースの可能性について、新たな捉え方をする人が増えている」と指摘する。
アレキサンダーが説明するように、ネイバーフッドグッズはこの10年で新たに出現した多彩なコンセプトを見事にまとめ上げた空間になっていると感じられる。たとえば、ストアフロントのようなスタートアップ企業は、すでに2013年から新興ブランドとポップアップストア設置スペースのマッチングサービスに乗り出し、商業スペース賃貸業界に新風を吹き込んだ。
レイチェル・シェヒトマンが創業した「ストーリー」という企業は、ニューヨークシティで店舗をまるごとブランドの世界観に染め抜く体験型店舗を運営している。シェヒトマンは、小売りが「売り場面積当たり売上高」の時代から、「ブランドのためのメディアチャネル」の時代に軸足を移しつつあると早い時期に提唱した人物でもある。
他にも、小売りとは貴重な顧客データを収集できる場であり、消費者と商品のふれあいを収益化に結びつける場であるという考え方のスタートアップ企業が次々に現れている。そしてこうした考えを補完するのが、プラットフォームとしての実店舗なのだ。この実店舗を使って、ブランド各社は店舗運営に伴う心配ごとや費用を気にすることなく、各社ならではのストーリーを語ることができるのである。ネイバーフッドグッズは、まさにそれぞれのコンセプトを見事に融合している。
ネイバーフッドグッズは、1300平方メートルに満たない店舗面積ながら、一歩足を踏み入れると、常にカテゴリーの垣根を越えて40ほどのブランドのアクティベーションやインスタレーションが目に飛び込んでくる。また、日中は軽食やコーヒー、夜はカクテルを出すレストランもある。レストランの食器類から厨房の調理道具に至るまで、スペース内にあるものならすべて購入可能だ。
しかも、アレキサンダーによると、ネイバーフッドグッズは、交流の場としての店舗利用も想定していて、人々がのんびりくつろげる空間にもなっている。これは、店舗のデザインセンスだけでなく、従業員とも深い関係がある。
「全スタッフを自前で揃えていて、美的感覚に関して徹底したガイドラインと制約事項を定めています。ですから、スタッフ間の一貫性やまとまりが感じられます。スタッフはおもてなしに関しても、高度なトレーニングと指導を受けていて、担当するブランドの知識や話題が豊富です」
収益モデルについて、アレキサンダーは、ブランドパートナーごとにある程度柔軟に対応していると説明する。その1つが、ブランドが月額固定料金を支払う方式だ。スタッフ、データ利用、その他売り場づくりに必要な費用は、この料金にすべて含まれる。技術面や取引はすべてネイバーフッドグッズが担当する。ブランド側は、30日以上、12カ月までの範囲でスペースを確保する。