(※写真はイメージです/PIXTA)

リアルの小売り店舗の価値を新しく打ち出した新業態も芽吹きつつあります。具体的には、従来のように「消費者に売る」ことではなく「消費者に新しい価値を提供する」ことで、収益化を試みるビジネスモデルです。ダグ・スティーブンス氏が著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)で明らかにします。

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    リアル店舗の価値を新しく打ち出したデパート

    パンデミック後も、時代を超えて消費者が抱いている問いかけが少なくとも10種類ある。消費者は、この問いかけに対する答えを求めている。しかも、頂点に君臨する怪物企業やミニマーケットプレイスでは答えにならない問いかけがあるのだ。

     

    あなたのブランドが、こうした問いかけに対して明快な答えとなれば、特定のカテゴリーでしっかり差別化ができるだけでなく、それなりに抜け目のなさもあれば、規模に似つかわしくないほど大きな売り上げと利幅を確保する収益力も発揮するはずだ。

     

    【図】10のリテールタイプ

     

    「流行仕掛人」型

    ■消費者の問いかけ「新しくてクールなものは、どこにいけば手に入る?」

     

    「未来の百貨店」を謳い、斬新な小売りのコンセプトを引っ提げて市場へ参入したネイバーフッドグッズの1号店は、テキサス州で産声を上げた。そのテキサス州は、老舗百貨店JCペニーの本社所在地というのも皮肉な話だ。

     

    JCペニーは、アメリカ最大級の百貨店チェーンとして、最盛期には2000店を超える国内店舗数を誇っていた。多彩な商品を取り扱い、中産階級の消費者の暮らしのなかで揺るぎない地位を築いていた。こうした消費者は、テイストやファッションセンスの指南役として百貨店を頼った。

     

    ところが、今日のように、およそ思いつく限りのものが自由自在に手に入る時代になると、そのような優位性はもはや通用しない。2020年5月15日にJCペニーの経営が行き詰まり、破綻に追い込まれたことが何よりの証拠である。

     

    それでもネイバーフッドグッズの創業者マット・アレキサンダーは、2017年に、まさにJCペニーのお膝元のテキサス中心部で、かつてJCペニーなどが確立したチャネルを新たに定義し直そうと乗り出したのである。

     

    私が初めてアレキサンダーと言葉を交わしたのは2018年のこと。テキサス州のダラス市街地から車で25分ほどのところにある都市プレイノで、1号店のオープンを間近に控えていたころだ。今風のあご髭を生やし、普段着を着こなすアレキサンダーは、小売りの役員室よりも、レコーディングスタジオのほうが似合いそうな風貌だ。

     

    だが、いざ話してみると、次々に会社を起こしてきたイギリス生まれの若き起業家が、ビジネスの申し子であることはすぐにわかる。

     

    実店舗型の小売りの終焉やら、アマゾンやアリババなどの支配やらのニュースが毎日のように伝えられるなか、若き起業家が、あえて実店舗で勝負する大きな賭けに出ようと思ったきっかけに、私は興味を惹かれた。

     

    <デジタルネイティブを顧客に持つブランドが、実店舗中心の小売りの世界に飛び込むには何が必要か、参入のハードルを下げるにはどうすればいいのか、どうすればまったく新しいタイプの小売り体験を構築できるのか。そんな話をしているうちに集まった会社なんです。

     

    その中心テーマは、表向きは新しい百貨店を創り出すことでしたが、商品棚や季節商品という代わり映えのしない風景ではなく、さまざまなブランドやブランドアクティベーション(メディアプラットフォームとチャネルの融合など、広告以外の方法でブランドの認知度を高めて顧客に訴求する手法)を柱に、絶えず変化する場を創り出すことでした。しかも、D2C(製造者による自社ECサイト経由での消費者との直接取引)系の企業にとどまらず、あらゆる種類の企業を対象にしようと考えました。>

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    ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    ダグ・スティーブンス

    プレジデント社

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