(※写真はイメージです/PIXTA)

買い物が楽しい「体験」としてエンターテイメント化されている、体験型ショップが小売業界で注目されているといいます。経営破綻したトイザらスの穴を埋める、玩具店の「CAMP(キャンプ)」は、コロナ禍が直撃されます。この体験型ショップはこの難局をどう乗り切ったのでしょうか、ダグ・スティーブンス氏が著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)で明らかにします。

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    街に玩具が買える場所がなくなった

    パンデミック後も、時代を超えて消費者が抱いている問いかけが少なくとも10種類ある。消費者は、この問いかけに対する答えを求めている。しかも、頂点に君臨する怪物企業やミニマーケットプレイスでは答えにならない問いかけがあるのだ。

     

    あなたのブランドが、こうした問いかけに対して明快な答えとなれば、特定のカテゴリーでしっかり差別化ができるだけでなく、それなりに抜け目のなさもあれば、規模に似つかわしくないほど大きな売り上げと利幅を確保する収益力も発揮するはずだ。

     

    【図】怪物企業とミニマーケット

     

    「アーティスト」型

     

    ■消費者の問いかけ「一番充実した体験が味わえるのはどこ?」

     

    「玩具だって、そんなにたくさん売っているわけではないんですよ」

     

    そう言うのは、ニューヨークシティきっての異色の玩具店「キャンプ」の創業者であるベン・カウフマンだ。

     

    実際、カウフマンによれば、同社の売上高のうち、玩具販売分は4分の1程度に過ぎない。カウフマン自身は、玩具店のレッテルを貼られるのが好きではないようだが、明らかに「キャンプ」は玩具店と言わざるを得ない。それも本来ならトイザらスあたりがこういう役割を担うべきだったし、担えたはずだったのだが、カウフマンがあっという間に具現化してみせた。

     

    彼に言わせれば、「トイザらスは、『どこに行けば玩具が買えるの?』という問いかけには答えを出しています。一方、キャンプが答えてみせた問いかけは、『今日は何をしようかな』なんです。そういう問いかけになると、答えはいくらでも考えられるはずです」とカウフマン。

     

    2018年の夏のことだった。カウフマン(バズフィードの元マーケティング責任者)は妻と1歳半の息子とともに、ニューヨークシティに暮らしていた。そのほんの2カ月前にトイザらスが、経営破綻に追い込まれたことが追い風となって、カウフマンの思いに火がついた。

     

    「街に玩具が買える場所がなくなっちゃったんですよ」

     

    しかも、親子連れで何度行っても楽しめるような場所もないことに気づいた。

     

    「子連れファミリーが家族単位で定期的に通いたくなるような、わくわくする体験はどうすれば生み出せるのか」と考えを巡らせているうちに「キャンプ」をひらめいたという。「子供だけでなく、あくまでも家族一緒に楽しめる体験の場という視点で考えたんです」。スターバックスの遊び版とでも言えよう。

     

    そこで、カウフマンはニューヨークの5番街に「キャンプ」をオープンすべく動き出したのである。

     

    店に一歩足を踏み入れると、カウフマンが断言するように、巷で言われる玩具店とは明らかに違う雰囲気に包まれている。確かに従来の意味での物販に割かれている面積は、店舗全体の2割程度に過ぎない。残る8割は、同社に言わせると、子供と家族が体験できるブラックボックス的シアターだ。

     

    「『マジックドア』という空間があるのですが、ここは定期的に変わるテーマに沿った体験ができる場で、テーマは約3カ月ごとに変わり、多くの場合、何らかのブランドがスポンサーになってくれます」

     

    次ページかなり手の込んだテーマ型体験空間を創出

    ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    ダグ・スティーブンス

    プレジデント社

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