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「仕事と育児」の両立を目指すも、1年で限界を実感
結婚した女性医師がキャリアを考えるうえで、大きなポイントになるのが出産と育児。周囲の理解や家族の支援のほか、副収入があれば乗り越えやすくなるはずです。
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【井原さん(仮名)のプロフィール】
年齢:37歳
所属:大学病院(勤務医)
専門(標榜科):皮膚科
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皮膚科医の井原さん(仮名)は初期臨床研修が終わったタイミングで、会社員の男性と結婚。
「ちょうど同じ頃、同じ医局の先輩の女性医師もたまたま結婚して産休に入ったんですが、まわりの反応を見てびっくり。正直、出産は専門医資格を取ってからにしようと思いました。」
後期研修に進むと当直や呼び出しもあるハードな勤務でしたが、ご主人は文句も言わず応援してくれて助かったそうです。
ところが、後期研修が残りあと1年という頃、思いがけず妊娠。夫婦とも近くに頼れる親兄弟はおらず、手術も多い病院だったので働き続けることを断念。いったん休業することに。
そして、子どもが生後8ヵ月になった段階で、別の病院の皮膚科外来に常勤医として復帰しました。
「そこは院内保育園があってやれると思ったんですが、子どもが次々と病気にかかり、毎日のように呼び出しを受けるように。しかも、皮膚科の常勤医は私一人で、1日100人近い外来患者に対応しなければならず、結局、自分の体調も損ねてしまいました。」
キャリアを中断したくないと常勤にこだわって復帰した井原さんですが、このままでは何もかもがうまく行かなくなると判断し、1年で非常勤に変わりました。
出産後も「ばりばり現役」の先輩医師を見て…
そんな時、井原さんが出会ったのが不動産投資。きっかけは、信頼する先輩の女性医師の話を聞いたことでした。
「その先輩も結婚、出産を経て、今は常勤医として第一線でばりばり働いています。私が真似したいなと思ったのは、非常勤やアルバイトを中心に仕事をこなしていた子育て中に投資や資産形成の勉強を始めて、まずは新築の区分ワンルームを1戸、購入したこと。そこから次第に物件数を増やしていき、安定した副収入を確保しているんです。そのため、勤務先の病院を探すにしても、自分の働きやすい条件に妥協せず、じっくり探せると言っていました。私もぜひ、そうなりたいと思ったんです。」
こうして井原さんは3年ほど前、新築の区分ワンルームを1戸、購入しました。融資の元利金返済や諸費用を差し引くと、毎月数千円の持ち出しになっていますが、融資とセットになっている団体信用生命保険による保険料だと思えば、さほど負担には感じないそうです。
また、立地が良いので入居者の確保は問題なく、建物の修繕費などもほとんど発生しません。
今後はもう1~2戸、区分ワンルームを買い増すとともに、キャッシュフローを確保しやすい中古マンションを1棟、購入する計画を進めているところ。これからも不動産投資について一歩ずつ、実践と理解を積み重ねながら、安定した副収入を確保。きっと、育児と仕事を両立させやすい働き方を見つけることができるはずです。
賃貸用不動産を購入する際の手続き
不動産投資を始めるに当たっての流れを確認しておきます。おおむね、次のような手続きを踏みます。
①情報収集
自分の目的等に応じて、インターネットや不動産会社の店舗などで区分ワンルームや1棟マンションなどの物件情報を集めます。まずはいろいろな物件情報を見て、相場観やエリアごとの傾向などをつかむとよいでしょう。
②問い合わせ・資料請求
気になる物件があれば、不動産会社に問い合わせて、物件概要など詳しい資料を請求します。
なお、賃貸用不動産の場合、周辺の賃料相場と募集賃料、中古の場合は空室率や固定資産税などを確認し、利回りもチェックすることが重要です。
③現地調査・内覧
検討をさらに進めるため、現地調査を行います。最寄り駅から歩いてみて周辺環境を確認し、建物の外観はもちろん空室の場合は室内も見ます。
ただし、マイホームと賃貸用不動産では購入目的が違います。あまり自分の好みや印象にこだわらないようにします。
④買付申込
購入の意思が固まれば、不動産会社に買付申込書を提出します。買付申込書には、物件の名称・所在地などの概要、買付希望価格、支払方法、手付金の金額、有効期限などを記載します。指値(値引き)交渉やローン特約(融資が下りなかった場合は契約を白紙撤回する取り決め)などの希望があれば、あわせて記載します。
ただし、買付申込書の提出はあくまで購入の意思表示であり、売主と優先的に交渉するための手続きです。法的な拘束力はなくキャンセルは可能ですが、あまり安易なキャンセルは信用を失うことにつながりかねません。
⑤金融機関への融資打診
物件購入に当たって融資(ローン)を利用する場合、⑥売買契約を結ぶ前に、金融機関に融資の相談(打診)を行います。打診する金融機関は自分で探してもよいのですが、不動産会社の紹介によるケースも少なくありません。
相談に行く際は、物件概要やご自身の源泉徴収票などの資料を用意していくと、その後の手続きがスムーズです。事前に金融機関の担当者にどんな資料を持っていけばいいか、確認しておきます。
なお、この段階ではまだ融資を受けられるかどうかは確定していません。複数の金融機関に同時並行で打診するのがよいでしょう。
⑥売買契約
売主との交渉がまとまり、融資の事前審査でもOKが出たら、物件の売買契約を結びます。
不動産の売買契約では通常、契約前に宅地建物取引士による重要事項説明が、売買契約の当日、売買契約に先立って行われます。物件や取引条件に関して、法律で定められた一定の重要な事項について書面を基に説明を受けるのです。
問題がなければそのまま、売買契約書に売主、買主が署名・捺印し、買主は手付金を支払います。手付金は売買価格の5~10%が目安とされていますが、基本的には売主と買主の合意によります。
なお、全額キャッシュでの購入でない限り、買主側としてはローン特約を付けます。ローン特約がないと、融資が承認されなかったことを理由に契約を解除するには、手付金を放棄しなければならなくなります。
事前審査ではOKが出ていても、その後、融資が認められないケースもあるので、注意しなければなりません。
⑦金融機関との金銭消費貸借契約
売買契約を結ぶとすぐ、金融機関に融資の本審査を申し込みます。本審査の結果が出るまで2週間ほどかかるのが一般的です。
本審査が通ったら、金融機関との間で金銭消費貸借契約(ローン契約)を結び、同時に団体信用生命保険の申し込みや抵当権設定契約なども結びます。
なお、実際に融資が下りるのは、次の⑧決済・引き渡しの時です。
⑧決済・引き渡し
通常、売買契約から1ヵ月以内をめどに、すでに支払った手付金以外の残金と各種諸費用の支払い、購入する物件の登記変更のための書類や鍵の受け渡しなどの手続きを行います。
この決済・引き渡しの手続きは、融資を受ける金融機関の店舗で行われるのが一般的です。当日は、売主、買主、不動産会社の担当者、金融機関の担当者、登記手続きを行う司法書士などが出席します。
決済・引き渡しののち、登記簿上での所有権が買主に移ることで、一連の手続きは終了です。
大山 一也
トライブホールディングス 代表取締役社長
植田 幸
資産コンサルタント、宅地建物取引士、AFP(日本FP協力認定)
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