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「地域包括ケアシステム」構築では医師の活躍が不可欠
日本は世界で最も人口の高齢化が進んでいて、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、医療や介護のニーズはさらに増えると予想されています。
そこで政府が進めているのが「地域包括ケアシステム」の構築。これは、2025年をめどに、高齢者ができる限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう、医療や介護にとどまらず住まいや生活支援など包括的なサービスの提供体制を整えようというものです。
この「地域包括ケアシステム」の構築に当たって、医師の果たす役割は当然、大きなものがあり、その具体的な取り組みの一つが、訪問診療です。
「最期まで寄り添う医療」を目指して訪問診療医に転身
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【中江さん(仮名)プロフィール】
年齢:53歳
所属:訪問診療クリニック(院長)
専門(標榜科):家庭医
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中江さん(仮名)は長年、地域の中核病院で呼吸器内科医として勤務していました。そこで多くの患者たちの声を聞き、2年前に訪問診療クリニックを開業しました。
「勤めていた病院は急性期治療が専門で、急性期を過ぎた患者や緩和に移行した患者は、転院したり退院したりしていきます。多くの症例を経験できることは医師としてやりがいもあったのですが、もっと一人ひとりの患者と最期まで向き合いたい、患者に寄り添った医療をやりたいと思うようになり、訪問診療医に転身することにしたんです。」
中江さんにとって、開業には資金準備のほか、クリニックの場所探し、スタッフの募集などさまざまなハードルがありましたが、同じ病院で働いているご主人が全面的に協力してくれたとか。
「病院側でもこれまで、退院した患者のフォローが課題になっていて、スムーズに連携しています。経営的にも、思ったより順調です。問題は休日や夜間の対応ですが、これについては救急診療機能を提供している大手の在宅医療クリニックと提携することでカバー。これから訪問診療へのニーズはますます高まるはずで、医師のキャリアにおける新たな挑戦として手ごたえを感じています。」