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子育てが終わり、充実したプライベートを送るが…
50代に入ると、自分のキャリアや家庭のことだけでなく、親の介護や相続が身近な問題になってきます。それは医師でも同じこと。さまざまな選択や対応が考えられます。
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【大岡さん(仮名)のプロフィール】
年齢:55歳
所属:クリニック(院長)
専門(標榜科):皮膚科
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大岡さん(仮名)は20代後半で結婚し、3人のお子さんを授かりましたが、40代で離婚。その後、一人で育て、すでに全員、社会人として立派に独立しています。
3年前には父が開設したクリニックを引き継ぎ、新たに皮膚科として開業。開業に当たっては、「マイホームのように寛げるクリニック、家族のように気軽に話せる医師」を目標に掲げました。
プライベートでは子育ても終わり、これからは自分の人生を思い切り楽しみたいと考えている大岡さん。一番の趣味は旅行で、アフリカで野生動物を見たり、世界各国の世界遺産を巡るのが好きだとか。
また、ワインはソムリエの資格ももっているほど造詣が深く、フランス、南アフリカ、アメリカ、チリなど世界各地のワイン産地を訪ねるのも恒例行事になっています。
「ここしばらくはコロナ禍で無理でしたが、そろそろ気の合う女性医師の友人たちと出掛ける予定。今からいろいろプランを立てているんです。」
自宅、アパート、駐車場などを持つ両親…相続税が不安
そんな大岡さんが最近、気になっているのがクリニックのほか、ご両親が所有する自宅や駐車場、アパートのこと。
両親ともすでに80歳を超え、いつ相続が発生してもおかしくありません。大岡さんはきょうだいがいないので遺産分割で揉(も)める心配はありませんが、逆にご両親の介護が必要になったときの費用の確保や相続税の負担などが問題になりそうです。
「顧問税理士に相談しているのですが、別の視点からアドバイスをもらいたいと思い、医師専門の不動産コンサルタントに連絡を取ってみました。資産内容や私の意向を伝えたところ、提案されたのは遠方にある駐車場やアパートを処分し、その資金で自宅を賃貸マンションに建て替えるというプラン。クリニックもその後、建て替えて、診療はそのまま続けながら、上階に両親と同居すればどうかということで、前向きに検討しているところです。」
不動産を有効活用することで、将来の介護や相続に備え、そして何より生涯現役を続けながら地域の人たちの役に立つ。大岡さんの人生はますます充実したものになりそうです。
不動産投資は「相続税対策」にもなる
不動産投資のメリットの一つは、相続税対策になるということです。キャリアを積み、資産形成も達成された医師の方たちにとっては、ぜひ検討したい点です。
相続税とは、亡くなった人(被相続人)が生前に所有していた財産的価値のある資産を対象に掛かる税金で、相続人がそれぞれの相続割合等に応じて負担します。
相続税の計算で大きなポイントになるのは、相続した資産をどう評価するかです。相続税法では基本的に「時価」で評価するとしており、現金や預金は額面どおり、上場株式や国債などは相続時の市場価格で評価されます。
一方、土地や建物などの不動産は「時価」の評価が難しく、国税庁の通達によれば、土地については毎年、各地の国税庁が公表する「相続税路線価」などを基に、建物については市区町村が定める固定資産税評価額を基にして、評価することになっています。
そして、地域によって差はありますが、相続税の計算上、土地については市場価格に比べて7割程度、建物については5割程度にまで下がるとされます。
つまり、現金や預金、上場株式や国債などに比べて、土地や建物など不動産は相続税の計算においてかなり有利に評価されるのです。
さらに、アパートやマンションなどの賃貸用不動産は、第三者に貸していることで利用に制約が生じており、マイホームなどの自用不動産よりさらに相続税の計算において、評価額が軽減されます。
こうしたことから、将来の相続に備えて、現金や預金、上場株式や国債などの一部を不動産、とりわけ賃貸用不動産に替えることで、相続税の負担を抑えることが可能になります。
なお、賃貸用不動産の購入において、融資(ローン)を利用すると、相続税の計算上、融資額はそのままマイナス評価となります。賃貸用不動産の土地や建物の評価額(プラス評価)より融資のマイナス評価のほうが大きければ、その分は他の相続資産と相殺され、さらに相続税の負担を抑えられる可能性もあります。
こうした不動産投資による相続税対策は、さまざまな条件も関係するため、不動産コンサルタントや税理士に相談されることが重要です。
大山 一也
トライブホールディングス 代表取締役社長
植田 幸
資産コンサルタント、宅地建物取引士、AFP(日本FP協力認定)
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