(※写真はイメージです/PIXTA)

東京になぜ「営団」と「都営」という2つの鉄道事業者が存在することになったのでしょうか。民営化と株式上場は、鉄道を単なる移動手段に限定されない、「元気な事業」に生まれ変わらせることができます。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で「地下鉄の謎」を明らかにします。

民営化と株式上場で地下鉄が生まれ変わる

形式的といっても、東京メトロが民営化されることによって、利用客へのサービスが向上した例もあります。営団地下鉄の頃は、広告事業や駅構内売店を除き、鉄道事業以外では収益を上げてはいけないことになっていました。現在はカフェやレストランなどの商業施設「エチカ」の事業が展開されています。地下鉄の鉄道施設に隣接した周辺スペースを利用し、商業施設を運営することによって、利用者の利便性を高めることができるようになったのです。

 

地上の路線を運営する鉄道会社のように土地を持っていない地下鉄会社は、大きなデパートを建てるなどの事業は難しいのですが、地下の空間を有効利用したサービスが展開できるのは、民営化の恩恵です。さらに東京メトロと都営地下鉄を一元化し、民営化することで、もっと良いサービスの提供が期待できます。収益力自体は、現在の東京メトロも都営地下鉄も、両方とも持っています。民営化は利用者へのサービスが向上する話なのです。

 

行政組織でなくなると、まず「お客様目線」を持つようになります。平成30年(2018)に大阪市営地下鉄の民営化が進められたときには、駅のトイレが綺麗になったと話題になりました。民営化の利点は、こうしたお客様に提供する施設の向上や、そのメンテナンスだけでなく、鉄道会社が持っている空間をどのように使うかという発想やアイディアが生まれる環境ができるところにもあります。

 

東京の地下鉄がもっと自由な発想で経営できるようになっていくと、色々なことが事業化できるようになります。例を挙げると、通路を利用してのストリートライブは、現在でも一部ですが、申請をして許可されれば、スペースの一画を無料で使わせてもらうような形で行われています。たとえばこれを事業化して、利用客に楽曲を提供するサービスができる可能性もあります。

 

最近は他企業と連携して、リモートワークなどに使えるボックス型のミニオフィスの設置が試験的に行われているところもあります。スペースを通行に限らず利用することで利便性を向上させたり、エンターテインメントなど利用者を楽しませるようなサービスの提供を行ったりできる可能性が広がります。

 

そして収益を高めていくことにより、地下鉄は立派な納税企業になります。これまでは政府や東京都が出資をしていたのに、逆に地下鉄が納税主体になることも、民営化の大きな要素です。都心部の交通を担う鉄道会社が分断され、2つの鉄道会社がいがみ合っているよりも、一元化されて余計な利用料金がなくなり、かつ様々な事業が生み出されていく方が良いに決まっています。

 

もっと住民や利用者の目線で、便利で楽しい地下鉄を考えていけばよいのです。民営化と株式上場は、鉄道を単なる移動手段に限定されない、「元気な事業」に生まれ変わらせるのです。

 

渡瀬 裕哉
国際政治アナリスト
早稲田大学招聘研究員

 

 

※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

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