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公共インフラを民営化する本当の意味
■空港民営化——インフラ運営のノウハウを世界に売り出す
日本国内で一般的な移動手段に使われているのは鉄道ですが、さらに遠距離を移動するためには航空機を用いることが必要です。日本は南北に長い国土なので、北から南へ一気に移動するときには、飛行機の利用がもっとも早い方法です。また、橋で結ばれていない島々のうち、空港のある大きな島には船と並んで飛行機で移動することも多いでしょう。
また、アメリカのような国土の広い国は、国内旅客線も充実しています、1903年にアメリカでライト兄弟が人類初の動力飛行に成功して以来、人や物を空路で運ぶ技術は百年ちょっとの間に長足の進歩を遂げました。アメリカでは1914年に定期旅客輸送が始まります。
そして、第一次世界大戦後の1927年には、アメリカの飛行家チャールズ・リンドバーグが大西洋横断無着陸飛行に成功し、航空機は第二次世界大戦を経て航続距離を伸ばし、高速化・大型化が進んでいきます。
こうした航空輸送の拠点となるのが空港です。国内外を空路で運ばれる人や物の流れは、大部分が空港を経て各地へ運ばれていきます。世界中には、施設の規模を問わず閉鎖や廃棄されたものまで含めると、四万か所を超える空港や飛行場が存在しています。
このうち、IATA(国際航空運送協会)による三文字のコードが割り振られている空港は1万以上、定期運航で使われている空港はおよそ3600を数えます。
日本国内の公共用飛行場は97あります(公共用ヘリポートを除く)。成田空港や羽田空港などの発着数が非常に多い有名な空港以外にも、全国の都道府県や政令指定都市が管理する空港がたくさんあります。
一般の人には、空港は役所が運営しているものというイメージが何となく持たれています。ところが海外の有名空港は、民間の会社が運営しているところが数多くあります。日本も、最近では空港運営の民営化、民間委託が地方レベルで進んできています。
こうした公共の施設、行政サービスに関わる事業を民間に委託することをコンセッションと言います。政府が持っていた事業の運営権そのものを民間企業に一定期間売却することによって、事業収益をきちんと上げ、より良いサービスを利用者に提供しようという仕組みです。
空港だけでなく、道路や上下水道などの一般的には行政に属すると思われているインフラの運営によく使われる方法です。特定の民間企業が単体で委託を受けることもあれば、複数の企業や団体がまとまったコンソーシアムによる運営の場合もあります。