(※写真はイメージです/PIXTA)

アウトドアブランド「パタゴニア」は年間売上高の1%を環境団体に寄付しています。パタゴニアは、素材や生産の環境負荷を抑えるために高い基準を設定しています。そのような企業の社会的責任がどれほどの収益性につながっているのか、ダグ・スティーブンス氏が著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)で明らかにします。

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    年間売上高の1%を環境団体に直接寄付

    1973年にロッククライミングのガイドだったイヴォン・シュイナードが創業したパタゴニアは、2018年に約10億ドルを売り上げるグローバル企業に成長し、行動にしても対応にしても、社会的責任を常に貫いてきたことが評価され、グローバルなアウトドアウェアブランドの頂点に立っている。

     

    1985年以来、同社は(儲かっているかどうかにかかわらず)年間売上高の1%を環境団体に直接寄付している。この取り組みを通じた寄付額は、現在までに2億5000万ドル以上に達している。

     

    2017年には、北アメリカに暮らすホピ族、ナバホ族、ユト族(ユテ族)、ユト山ユト族、ズニ・プエブロ族といった先住民と連携して、トランプ政権を訴える行動に出た。ナショナル・モニュメント(国定記念物)指定保護地域として有名な「ベアーズイヤーズ」と「グランドステアケースエスカランテ」の2カ所について、トランプ政権が大幅縮小を発表したからだ。石炭、石油、天然ガス、ウランの掘削業者の求めに応じるがままの決定であり、それ以外の根拠がないというのが訴訟の理由だ。

     

    2019年、パンデミック前にパタゴニアは、コロラド州ボールダーにパタゴニア製品の再販を柱とするポップアップストア「ウォーンウェア」を開店させた。

     

    同年、ロンドン中心部に「アクションワークスカフェ」をオープンした。これは、顧客と地域の環境保護活動団体をつなぐオンラインコミュニティ「アクションワークス」の延長線上にあり、気候変動問題に関する意識啓発を目的としたコミュニティのトレーニング拠点やイベントスペースと位置づけられている。

     

    だが、バスケットボール界の名将として鳴らした故ジョン・ウッデン風に言うなら、自分の性格を正しく判断するには、誰からも見られていないときの自分の行動を見ればいい。そのため、パタゴニアは、世間の目にさらされている面だけでなく、見えない部分でも自ら掲げた主義を貫いている。

     

    同社は、2025年までにカーボンニュートラルを達成すべく取り組んでいる。同社サプライチェーンから排出されるCO2の回収、抑制、除去のいずれかの方法で実質ゼロにすることを意味する。また、同じ期限で、衣料品製造にサステナブル原料かリサイクル原料だけを使う体制に移行するという。同社が取り組んでいる施策は多数あり、ここに挙げたのはそのごく一部に過ぎない。

     

    特に素晴らしいと感じるのは、パタゴニアが活動家を従業員として採用してブランドの理念や自然愛を広めてもらうだけでなく、仮にこうした活動家従業員が平和的な抗議行動で逮捕されるようなことがあれば、保釈金を払って従業員(や行動をともにしたパートナー)の保釈に力を尽くすことだ。さらに、こうした従業員の弁護士費用や裁判中の賃金も保障するという。

     

    パタゴニアのような「活動家」型の小売業者は、大義を大切にするだけでなく、商品、サプライチェーン、バリューチェーン、利益モデルにも大義を織り込んでいる。コミュニケーションや体験を軸とした消費者とのタッチポイントも、会社の大義をいわば北極星のように掲げ、そこからぶれないようにしている。

     

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    ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    ダグ・スティーブンス

    プレジデント社

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