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企業の社会的責任がどれほど収益になるのか
だからこそ、そのカテゴリーのリーダーであるだけでなく、社会運動、環境運動のリーダーとしても、顧客に訴えかけているのだ。顧客も従業員も、この大義に対する道義的な連帯感に駆られて「活動家」型の小売業者を選ぶ。
パタゴニアが「活動家」型の小売業者と聞いても、驚きはない。だが、そのような企業の社会的責任がどれほどの収益性につながっているのかを知ったら、驚くはずだ。2018年、コンサルティング会社IOサステナビリティとバブソン大学は、企業の社会的責任(CSR)に関する200件以上の研究論文を考察した結果、CSRに総合的に取り組む企業は、そうでない企業に比べて、財務成績が大きく上回っていることを突き止めた。
優位性としては、売上高の伸びは市場平均より20%も上回り、従業員離職率は劇的に低く(パタゴニアはわずか4%)、株価上昇率は最大6%、さらにはブランド資産価値の配当率は時価総額の最大11%に達する。
ただし、ひとくちにCSRと言っても、違いがある。CSRに対する姿勢は大きく分けて「外因性」と「内因性」の2つがある。外因性とは、営利目的かブランド認知獲得のためか、はたまた後ろ指を差されたくないからといった外部からの理由でCSRに手を出すことをいう。
一方、内因性とは、大義や使命にひたむきに取り組む姿勢が、その企業の存在の核になっていて、好ましい変化につなげたいという純粋な欲求から生まれたものであり、事業の隅々に組み込まれていることをいう。パタゴニアや同類の企業は、後者を体現している。
正統派の「活動家」型のブランドには、動物虐待反対の立場を鮮明に掲げるザ・ボディショップ(自然派化粧品ブランド)、人種間の不公平に対して勇気ある立場を示すベン&ジェリーズ(アイスクリームブランド)、銃暴力や気候変動などの問題について定見を示すリーバイス(ジーンズ)などがある。実際、パンデミック前に非常に好調な業績を上げていたリーバイスでは、経営が好調である主な要因として、積極的な行動主義に重点を置いてきた取り組みを挙げている。
ダグ・スティーブンス
小売コンサルタント