(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、海外投資家のなかで日本の不動産市場に対する関心が高まっており、2020年は前年に比べて30%増加しました。海外の投資家たちが日本の不動産に投資を続ける理由はなにか。シービーアールイー株式会社(CBRE)の難波ひとみ氏が、さまざまデータをもとに紐解いていきます。

コロナ対策で経済停滞のなか…物流施設への投資が増加

2020年の投資額は3兆8,480億円で、対前年同期比5.2%増加、取引件数は前年より20%減少した。COVID-19拡大の対策により経済が停滞するなか、収益が相対的に安定しているとみられる物流施設と住宅の人気が高まった(図表3)。

 

両アセットの総投資額は1.66兆円と、対前年同期比65%増加した。また、オフィスは、働き方の変化で中長期的な需要に対する懸念を持たれていたものの、都心の大型取引が散見されたことにより、投資額は同3.4%増加した。

 

一方で、商業施設とホテルの投資額は前年から大きく減少。インバウンド需要の消失や外出自粛で消費が落ち込んだことを受け、投資家の投資姿勢が消極的になったことが影響したと推察される。

 

[図表3]主要不動産取引(アセットタイプ別取引額)
[図表3]主要不動産取引(アセットタイプ別取引額)

 

COVID-19による影響は期待利回りの推移にも表れた。2020年Q4の東京の主要アセットタイプ別期待利回りは、物流施設とマンションが1年前より低下した一方、オフィスは横ばい、ホテルと商業施設は上昇した(図表4)。物流施設は、感染防止策による外出自粛でeコマース関連の需要が拡大したことが投資家の投資意欲を後押しし、利回り低下につながったと考えられる。

 

[図表4]期待NOI利回り(東京、アセットタイプ別平均値)
[図表4]期待NOI利回り(東京、アセットタイプ別平均値)

主な投資対象…オフィスに対して慎重な投資家が増加

2021年の主な投資対象として、投資家が選んだアセットタイプ上位3つは、物流施設、オフィス、住宅となった(図表5)。

 

ただし、前回調査に対して、オフィスが9ポイント減少し、住宅は8ポイント上昇。中長期的なオフィス需要の見通しに対する不透明感からオフィスに対して慎重な投資家が増加した一方で、より安定した収益に対する期待から住宅を選ぶ投資家が増えたと考えられる。

 

[図表5]主な投資対象
[図表5]主な投資対象

 

取得価格についても、アセットタイプによって投資家の見方が分かれた(図表6)。

 

アセットタイプ別の価格水準は、物流施設において投資家の16%が「売主の希望価格を上回る」と回答し、「コロナ前と比べて下がらない」も77%に上った。一方、「下がる」と回答した投資家は、オフィスが49%(収益が安定している大型ビル)と66%(バリューアッド可能な大型ビル)を占め、商業施設とホテルに至っては9割を超えた。

 

堅調な需要に支えられて賃料が上昇傾向にある物流施設は、投資家間の競争の激化により取引価格がさらに上昇する可能性がある。一方で、オフィスは投資対象としての重要性に変わりはないものの、空室増加や賃料の減少見通しを背景に、買主の価格目線はやや低下する可能性がある。

 

商業施設やホテルについては、需要の回復までに相当な時間を要すると見られている。そのため、取引では相応のディスカウントが求められることになろう。

 

[図表6]投資家が想定する、コロナ前と比較したディスカウント
[図表6]投資家が想定する、コロナ前と比較したディスカウント

 

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※本記事はシービーアールイー株式会社(CBRE)の「BZ空間2021夏季号」より一部抜粋・再編集したものです。
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