2020年、宅配便取扱個数は過去最高…巣ごもり需要で
これまで見てきたように、日本の投資市場、中でも物流施設に海外投資家の関心が高まっている。
ここで日本の物流マーケットに目を向けると、昨年の世界的なCOVID-19の拡大は外出規制や飲食店の時短営業など経済活動に大きな変化をもたらした。日本のEC市場は2008年から平均して11%を超えるほどの急成長をしてきたが、コロナ禍による巣ごもり需要によってより一層拍車がかかったと言える。
宅配業界大手3社(ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便)の2020年の宅配便取扱個数の合計は、どの月においても昨年より増加しており、年間では1割以上増加し過去最高であった2019年の全体の宅配便取扱個数を超えた。2021年もすでにかなりの伸びを示しており、今後もEC市場の拡大は続きそうだ。
通信販売市場の売上高は8兆円超
通販新聞社が行った通販・通教売上ランキング調査によると、上位300位までの売上総額は年々増加し、2020年には初めて8兆円を超え、過去最高値を上回った。2019年比では4.6%増加した。一方、伸び率は消費増税や宅配便運賃値上げなどの影響もあり、やや鈍化しているもののEC企業の躍進が市場全体の成長を支えている。
コロナ禍で顕在化した需要の過熱感は一服
2020年の新規需要は新規供給を上回り、空室率は過去最低の0.5%を記録。新規供給は、2021年64万坪、2022年89万坪で、過去最大を大幅に更新する見込み。
2021年Q1の空室率は前期から0.6ポイント上昇し1.1%となった。空室率が1%台になるのは、2019年Q4の1.1%以来。2020年に見られた需要の過熱感が一服し、空室率は上昇するものの、2%台の低い水準で推移すると予想する。
2021年Q1は物流企業が需要を牽引したが、取扱荷物を見るとEC企業や、オムニチャネル化を図る企業の拡張需要も見られる。2020年はコロナ禍で顕在化したマスクや日用品の「特需」もあって物流スペースを確保するための競争が激化したが、テナントの動きは一服しつつある。
向こう2四半期の間に供給が予定されている物件のうち、6割程度の面積はすでに内定済と見られる。全体では順調なリーシングペースであるが、立地やスペックによってリーシングの進捗状況に開きが出てきた。
空室率は上昇するも、実質賃料は横ばい
2021年Q1実質賃料は首都圏全体では4,460円/坪と対前期比横ばい。既存物件の賃料はいずれのエリアでも上昇基調が続いた。しかし、今期の竣工物件5棟中4棟が賃料水準の低い圏央道エリアで竣工したため、首都圏全体の平均値は横ばいとなった。
今後の大量供給により2021年、2022年の上昇率は抑えられるものの、上昇基調は続くと予想する。
難波 ひとみ
シービーアールイー株式会社(CBRE)
マーケティング&コミュニケーションBZ空間編集グループアソシエイトディレクター
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