(写真はイメージです/PIXTA)

特例事業承継税制を活用し、株式に対する相続税額について納税猶予を受けた事例について、行政書士法人ストレートの大槻卓也行政書士が解説します。

適用要件が厳しい不動産賃貸業でとった対策

事業承継税制では、会社の保有する資産のうち、有価証券・賃貸用不動産・ゴルフ会員権・絵画・宝石・現預金・同族関係者に対する貸付金などの合計が70%以上になると資産保有型会社に該当し、適用できないとされています。

 

また、これらの資産からの受取利息、受取配当、家賃地代などの収入が全体の収入の75%以上の場合には資産運用型会社に該当し、適用できません。

 

A社の場合も適用できない会社に該当していました。しかし、資産保有型会社や資産運用型会社であっても、「代表者とその同居親族以外の従業員が5人以上」の場合は事業承継税制の適用対象となります。

 

A社にはもともと収入管理や修理の手配などのための従業員が3名いました。賃貸物件の見回り・掃除などの管理業務は外注していましたが、この管理業務も社内で行うことにし、新たに人員3名を採用しました。これによって特例事業承継税制の適用が可能になりました。

 

そこで早速「特例承継計画」を作成して都道府県に確認申請をし、確認書の交付を受けました。これが3年前のことです。

先代経営者が死亡し納税猶予適用へ

今年に先代経営者が亡くなり、長女の配偶者が会社の株式、個人名義の不動産とこれに対応する債務を取得しました。長女以外の相続人2人には金融資産を等分に分割することで、円満に遺産分割が完了しました。

 

特例事業承継税制の適用を受ける場合、先代経営者死亡の日から5カ月以内に後継者が社長に就任する必要があります。A社では、すでに後継者が社長に就任していたので、その点はクリアしていました。

 

そして、死亡の日から8カ月以内に会社が都道府県に確認書を添付して特例事業承継税制の適用を受けるための認定申請を行い、認定書の交付を受け、無事に適用を受けました。

 

特例事業承継税制の適用を受けるには、会社規模、先代経営者を含む同族関係者の持株割合等の適用要件を満たす必要があります。

 

また、先代経営者からの相続または贈与から3年以内であれば、他の株式保有者からの相続または贈与についても特例事業承継税制の適用を受けることが可能です。

 

特例事業承継税制の適用を受けるには、令和5年3月31日までに「特例承継計画」の都府県への確認申請が必要です。

資産管理会社で特例事業承継税制を受けるための条件

■資産管理会社で特例事業承継税制を受けるための条件

・納税猶予を受けるためには納税猶予の対象株式を保有し続けなければならない

・A社は特例事業承継税制の適用対象となるため従業員(代表者とその同居親族以外)を増やした

・先代経営者からの相続または贈与から3年以内であれば、他の株式保有者からの相続または贈与についても特殊事業承継税制の適用を受けられる

・特例事業承継税制の適用を受けるには、令和5年3月31日までに特例承継計画の都道府県への確認申請が必要

 

 

大槻 卓也

行政書士法人ストレート 代表行政書士

 

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本記事は行政書士法人ストレートのコラムを転載したものです。

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