(写真はイメージです/PIXTA)

遺産分割協議では各相続人が自由に相続分を決めることができますが、相続人の中に大きな借金を抱えていた者がいる場合、遺産分割の内容に制限が加わることがあります。本記事では、行政書士法人ストレートの大槻卓也行政書士が遺産分割協議と詐害行為取消権について解説します。

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詐害行為取消権とは

債務者が債権者を害することを知って自己の財産を減少させる法律行為=詐害行為をした場合、債権者は裁判所にその行為の取消しを請求できます。

 

これを詐害行為取消権(民法424条)といいます。

 

この制度は、債務を負っている者が自己の財産を減少させることで債権者からの差し押さえを免れることは不当であるとし、これを取り消すことができるとしたものになります。

遺産分割協議と詐害行為取消しの関係

遺産分割は相続の承認を前提とするものであり、身分関係に付随する権利ではあるものの、共同相続人の間で成立した遺産分割協議は詐害行為取消権の対象になるとされています。

 

債権者による過度の干渉を防止するため、詐害行為取消権は財産権を目的としない行為について行使することはできません。

 

したがって婚姻・縁組・相続の承認といった身分行為は、債務者の財産を減らすようなものであっても詐害行為取消しの対象とはならないとしています。

相続放棄は詐害行為取消権の対象になるか?

相続放棄のような身分行為については詐害行為取消権の対象とはならないとされていますが、それがなぜなのかを説明しましょう。

 

遺産分割協議において、債務者の財産を減らす行為は積極的なものとみなされます。

 

しかし、相続放棄においては、相続人の意思においても、法律上の効果からも、財産の減少が消極的な行為にすぎないとみなされます。

 

また、相続放棄のような身分行為は他人の意思で強制すべきではありません。相続放棄を詐害行為として取消し得るのであれば、相続の承認を強制することと同じであり、これは不当であるとされています。

 

遺産分割協議において、一部の相続人が全く遺産を相続しないことは、実質的に相続放棄と変わらないので、両者の扱いを異なるものにすべきではないと思う方もいるかもしれません。

 

しかし、相続放棄は相続資格を遡及的に喪わせるものであるのに対し、遺産分割は相続の承認後の相続人同士での持ち分の譲渡となります。両者は明確に異なるものと考えられているのです。

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本記事は行政書士法人ストレートのコラムを転載したものです。

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