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「遺贈の種類」と「遺産分割方法の指定」の違い
遺言は、遺言者の死亡した時点で効力が発生し、相続財産の帰属に関する有効な遺言が存在するときは、その遺言内容に従って相続財産の帰属が決まります。
相続財産の帰属に関する遺言には、遺贈や遺産分割方法の指定などがあり、遺贈には包括遺贈と特定遺贈があります。
包括遺贈とは、遺贈の目的の範囲を、遺贈者が自己の財産全体に対する割合をもって表示した遺贈です。たとえば、「遺産の半分をAに遺贈する」という遺言です。
これに対し、特定遺贈とは、遺贈の目的を特定して表示した遺贈です。たとえば、「自宅の土地建物をBに遺贈する」という遺言です。
一方、遺産分割方法の指定とは、相続人間における遺産分割の方法を遺言者が具体的に指定する遺言で、指定の方法は問いません。
なお、特定の財産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言については、遺言者の意思は、財産を相続人に単独で相続させようとする趣旨のものとされています。
遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかでない、または、遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺贈ではなく遺産分割方法を定めた遺言であるとされます。
遺言書の内容と異なる遺産分割はできるのか?
結論から言えば、遺言と異なる遺産分割をすることは可能です。ただし、以下の条件を満たしている必要があります。
①被相続人が遺言で遺産分割を禁じていない
遺言では、死亡から5年を超えない期間を定めて遺産分割を禁止することができます。遺言と異なる遺産分割をするには、遺言に遺産分割禁止の記載がないことを確認しましょう。
②相続人全員の同意
遺言で遺産分割が禁止されていなければ遺言と異なる遺産分割協議ができますが、相続人全員の同意が必要です。
③遺言執行者の同意
指定または選任された遺言執行者がいる場合、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができません。
遺言の内容と違う遺産分割をする場合は遺言執行者の同意を得ましょう。
④相続人でない受遺者の同意
相続人以外の受遺者がいる場合は、受遺者の同意が必要です。遺言と異なる遺産分割をすることで受遺者の利益が損なわれることになるので、同意なく遺産分割を行っても無効になります。
受遺者の同意を得た後、包括遺贈と特定遺贈で手続きが異なってきます。
・包括遺贈の場合の手続き
包括遺贈の受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するので、受遺者が相続人でなくとも、受遺者と相続人とが遺産分割協議を行う必要があります。
しかし、包括受遺者は相続人と同様に相続放棄をすることもできます(相続開始を知った時から3カ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺贈放棄の申述書を提出する)。
受遺者が相続放棄を行うことで、遺言内容と異なる遺産分割を行えるようになります。ただし、相続放棄を行うと、遺産を全く取得することができなくなります。
したがって、包括受遺者の取得する遺産をなくし、他の相続人がすべての遺産を遺産分割により取得することは可能となりますが、包括受遺者にも遺産の一部を取得させるような遺産分割はできません。
・特定遺贈の場合の手続き
特定受遺者は遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができます(相続人または遺言執行者に意思表示をする)。
特定遺贈は、受遺者にとって利益になりますが、利益といえども受遺者の意思を無視して受領を強制すべきものではありません。
遺贈の放棄がなされるとその効力は遺言者の死亡時にさかのぼって生じ、相続人に帰属します。
したがって、特定遺贈の放棄をすることにより、相続人全員が遺産分割協議によって遺産の取得方法を自由に決めることができます。
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