(※写真はイメージです/PIXTA)

保有する賃貸物件が「振り込め詐欺の現金送付先」として警察庁のホームページに掲載されていることが判明し、借主から説明責任を問われた貸主と仲介業者。このようなケースは借主に対して説明義務があるのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際の裁判例をもとに解説します。※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

裁判所は説明義務違反についても否定

また、貸主及び仲介業者の説明義務についても

 

「当該事務所の賃貸人及び同賃貸借契約の仲介業者において、当該賃貸物件につき過去に犯罪に使用されたことがないかについて調査・確認すべき義務があるとは認められない。」

 

と述べて、説明義務違反を否定しています。

 

なお、裁判所は、上記のような結論となった理由として、借主の物件への転居後の売上の減少の経過を詳細に認定した上で、

 

「売上高の変化と貸事務所の住所が振り込め詐欺関連住所であることの間の因果関係が乏しい」

 

という点も指摘しています。

 

ですので、もし、転居と売上の減少について直接的な関係が証拠上認められるようであれば、結論が変わった可能性もあることは留意が必要です。

 

この事例では貸主と仲介業者の責任は否定されていますが、貸主、仲介業者としては、借主が「その事実を知っていたら普通は借りないだろう」と思われるような事実については、できるかぎり調査し、確認しておくのが無難であるといえます。

 

 

※この記事は2017年6月1日時点の情報に基づいて書かれています。(2021年12月10日再監修)

 

北村 亮典

弁護士

こすぎ法律事務所

 

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