(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症=アルツハイマー型と認識している人が多くいます。実際は、さまざまな種類があり、「治り得る認知症」も存在するのですが、医師ですら見逃してしまうことが少なくありません。ここでは医療法人昭友会・埼玉森林病院院長の磯野浩氏が、代表的な4つの「治り得る認知症」について解説していきます。

症状だけでは診断できない…確認したい「検査の値」

このうち認知症のような症状が出やすいのは低下症の方ですが、低下症ではほかにもだるさやむくみなどの多様な症状を呈します。それだけに診断が難しく、症状だけで低下症と診断することはできません。

 

元気がない、疲れやすいといった症状に加えて忘れっぽくなった、ぼーっとしているなどの認知症にも見られる症状が出ている場合は、低下症が特に疑われますので、かかりつけ医で甲状腺ホルモンの検査をしてもらうことをおすすめします。

 

少量の採血による血液検査のみで分かります。低下症と分かった場合には、飲み薬による甲状腺ホルモンの補充で治療できます。

 

低下症による認知機能の低下は、この治療によって改善可能です。ただし、もともとアルツハイマー型認知症や脳梗塞があるところに低下症が加わって、症状が悪化することも多く見られるので、その場合治療効果は限定的となります。

 

●ビタミンB12欠乏症

 

ビタミンB12は別名コバラミンともいい、葉酸とともに血液成分である赤血球や細胞の遺伝物質であるDNAをつくるために必要なビタミンです。肉や魚、卵や乳製品などの動物性食品だけに含まれているビタミンです。

 

体内にとりこまれたビタミンB12は、主に肝臓に貯えられます。数年分のストックがあるので通常は足りなくなることはありませんが、何らかの原因で胃の粘膜からのビタミンB12の吸収が悪くなると、貧血の状態になります。

 

ビタミンB12が不足する原因として多いのは、胃がんなどによって胃の摘出手術をしたあとに起こる場合です。これは年齢に関係なく起こります。また、偏った食生活や過量飲酒も不足のもとになります。

 

高齢者では、胃の手術をしていなくても、胃液の酸性度が低いために、食べたものに含まれるビタミンB12を取り出す機能が低下していることがあります。すると手足のしびれがとれない、白髪が急に増えた、何となく認知機能が低下してきた、などの症状があらわれます。

 

血液検査でビタミンB12の値を調べればすぐに診断がつきますが、一般的な健康診断の血液検査では、この値を調べない場合が多いので注意が必要です。治療はビタミンB12の補充で、薬の内服もしくは静脈注射を数回行うことで症状が改善していきます。

 

 

磯野 浩

医療法人昭友会 埼玉森林病院 院長

※本連載は、磯野浩氏の著書『認知症診断の不都合な真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

認知症診断の不都合な真実

認知症診断の不都合な真実

磯野 浩

幻冬舎メディアコンサルティング

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