(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症=アルツハイマー型と認識している人が多くいます。実際は、さまざまな種類があり、「治り得る認知症」も存在するのですが、医師ですら見逃してしまうことが少なくありません。ここでは医療法人昭友会・埼玉森林病院院長の磯野浩氏が、代表的な4つの「治り得る認知症」について解説していきます。

管を入れて…「劇的に認知機能が改善」する治療方法

とはいえ、症状だけでは診断を確定することはできず、画像検査を行う必要があります。CTで脳室の拡大が認められた場合、髄液を少量抜くことにより(タップテスト)、症状が軽減するケースも数多く見られます。

 

正常圧水頭症の中でも、くも膜下出血や髄膜炎、脳梗塞などの原因疾患がないものを「特発性正常水頭症(iNPH)」といいます。この場合には管を入れて髄液を抜く治療を行うことで劇的に認知機能が改善します。

 

ただし発症してから診断までの時間が経ってしまうと、この治療を行っても圧迫を受けた脳は元に戻らず、症状の改善も見込めなくなってしまいます。

 

●脳腫瘍

 

脳腫瘍には脳の細胞やその周辺の組織から発生する「原発性脳腫瘍」と、脳以外の部位で発症したがんが血液を通じて脳内に転移する「転移性脳腫瘍」があります。どちらも水頭症と同じく、大きくなると脳を圧迫しダメージを与えることで、神経細胞が損傷し、認知症症状が起こります。

 

治療は外科手術や放射線治療、薬物療法などを組み合わせて行い、脳腫瘍がなくなれば、認知症症状も自然とおさまります。

 

以前、「一人暮らしの70代男性に認知症のような言動が見られる」と近所の人から連絡が入り、保健師と居宅訪問したことがあります。その保健師は、数ヵ月前にも一度男性宅を訪ねたことがあるものの、本人が病院へ行きたがらなかったために医療機関への受診につながっていませんでした。

 

行ってみると、受け答えもはっきりせず明らかに様子がおかしかったのですが、決定的だったのが失禁していたことです。

 

アルツハイマー型認知症であれば、早期の段階で失禁することはまずありません。発症してから5、6年経ってからというのが普通です。つまり、この男性はアルツハイマー型認知症ではなく、別の病気である可能性が高いのです。

 

実際に検査したところ、私の見立てどおり脳腫瘍が見つかりました。放射線治療により寛解し、症状はなくなりました。

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※本連載は、磯野浩氏の著書『認知症診断の不都合な真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

認知症診断の不都合な真実

認知症診断の不都合な真実

磯野 浩

幻冬舎メディアコンサルティング

超高齢社会に突入した日本において、認知症はもはや国民病になりつつあります。そんななか、「認知症」という「誤診」の多発が問題視されています。 高齢者はさまざまな疾患を併せ持っているケースが多く、それらが関連しあ…

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