患者は初診から2、3回目で病院への継続受診の可否を決める (※画像はイメージです/PIXTA)

患者は、なぜその受診先を選び、どの段階でその医師に診てもらおうと選択し、継続的に受診することを考えるのだろうか。また、それはどのような患者の思考スタイルからおこるのか。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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患者の受診先選択は合理的か?非合理的か?

本連載の研究では、診療所に通う慢性疾患患者を対象とし、受診前の初回受診時、ならびに、通院中の継続受診時における受診先選択の意思決定に影響を及ぼす要因とプロセスを明らかにする。そして、受診先選択の意思決定プロセスを構造化し、仮説を生成することを目的とする。

 

これら意思決定プロセスの説明では、情報処理システムに関する二系統の思考スタイルを援用する。Kahneman and Frederick(2002)は、意思決定プロセスの代表的理論である二系統の思考スタイルについて、非合理的なシステム1 は直観的であり、合理的なシステム2 は熟考的であることを示している。この直観的思考は、経験則的であり、感情的な情報処理が行われる。

 

一方、熟考的思考は、分析的、規範的であり、論理的な情報処理が行われる。

 

情報処理システムと慢性疾患に関わる患者の受診先選択の関係を検討することは、患者の情報処理を理解したうえで、認知を考慮した訴求方法や情報伝達を思案できる。これは、新しい視点であり、過去にない知見が得られる。

 

■患者の受診先選択についてプロセスをたどってみる

 

(1)受診前と通院中の、患者の意識と受診先選択のプロセス

 

患者の受診先選択を理解するため、まずは、患者の受診に関するプロセスをたどってみる。

 

患者は、体調変化により病気を疑った時、医療機関への受診を考える。その際、患者は症状を基に情報を集めて病気を想定し、熟考して受診先選択を行う。ただし、患者の意思決定においては、専門性の高いサービスに生じる、情報の非対称性と期待の不明確性の影響が推測できる。

 

この情報の非対称性については、様々な見解が報告されている。例えば、Bloom etal.(2008)は、特にヘルスケアにおいて情報の非対称性は特徴的なものであり、患者は症状を説明することができるかもしれないが、患者の状態を明確に分類し、投薬について具体的に把握することは困難である。これは情報の不十分さによるものであり、そのため、医師と患者の間に不自然な力関係が生まれることを指摘している(Bloom et al.,2008)。

 

一方、医療提供者と患者の情報の非対称性は縮小しているとの見解もある。遠藤(2005)は、過去に制限されていた病院のウェブサイト、看板などに掲載できる情報公開、表現が緩和された点、カルテ開示や第三者評価の公開などが可能となり、患者自身が情報を取得できる内容が多くなったため、医師と患者による情報の非対称性が縮小緩和していることを指摘している。

 

しかしながら、一般的に自己の病気を症状で特定するのは難しい。そのうえ、受診経験のない医療機関を正しく評価して選択することは困難である。そのため、患者は、病気を経験したことがある、家族や知人などの身近な人から病気を探り、同時に医療機関の情報を得る。

 

もしくは、体調不良に気づいた家族が、経験による判断で受診をすすめることもある。したがって、受診前の初回受診先選択では、身近な人の評判や推薦、紹介等が、患者の意思決定に影響を与えることが考えられる。

 

受診先選択の意思決定は、受診前の初回受診先選択時だけとは限らない。慢性疾患の場合は、長期的継続的に治療を続ける必要がある。継続的に通院する場合、この医師で大丈夫なのか、もっと効果を期待して他の診療所に変えるべきかなど、患者は受診毎に選択を行っていることが考えられる。

 

跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長

中央大学大学院戦略経営研究科修士課程(MBA)を首席で修了、同大学院同研究科博士課程にて博士(経営管理)取得。医療福祉専門学校の学校長を経て現職。医師会・医療機関・製薬会社等で講演活動を行う。専門は医療マーケティング論、マーケティング論、企業マネジメント論など。

著者紹介

連載「患者インサイト」患者の深層心理がわかれば医療現場が変わる

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

杉本 ゆかり

千倉書房

「患者インサイト」とは、患者が心の奥底で考えている本音であり、医療に関する意思決定である。この患者インサイトを明らかにすることで、患者への情報提供や情報収集など、患者との効果的なコミュニケーション理解できるよう…

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