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「医師」の平均給料はいくら?
医師の年収は一般的な会社員や公務員よりは多いとされます。ただ、勤務先や職位、診療科などによって差があります。
まず、厚生労働省の「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」による2018年時点での数値です。これを見ると、勤務医のうちでも病院長と医師、および病院のタイプによる違いが分かります。また、一般病院のうちでも医療法人の病院長と一般診療所の院長(開業医)は、確かに勤務医よりかなり収入が高いことが分かるでしょう。
年齢やポジションによっても、年収は大きく異なります。
医学部を卒業し、2年間の初期臨床研修中は、まだ臨床を一人で行えないので年収は400万円前後といわれます。その後、後期研修の専攻医になると、正式な勤務医として病院に勤める場合、年収は700万~900万円になります。
さらにその後、経験年数やポジションが上がるにつれて年収が上がっていき、おおざっぱな目安として経験10年程度で1000万円程度、部科長クラスになると1500万円程度、院長になると2000万円ほどになります。
その平均額が【図表】の「医師」の平均給料というわけです。
ただし、大学の医局に所属している場合は市中病院とは少々異なるようです。
通常、大学の医局のほうが年収は低く、一例として20代後半から30代前半で300万~600万円、講師になると700万円程度、助教授で800万円台、教授で1000万円前後という話もあります。ただし、これは大学病院から支払われる給料であり、ほかにも関連病院などでのアルバイト等があるので、トータルではもっと多くなるでしょう。
また、市中病院でも公立病院と民間病院(主に医療法人が経営)で差が見られ、一般的には民間病院のほうが病院長も医師(勤務医)も収入は高い傾向があります。これは、民間病院のほうが医師1人あたりが対応する外来患者数・入院患者数が多く、また公立病院は看護師に掛ける人件費が多いためといわれます。
なお、退職金については、勤務する病院それぞれにおいて計算されるのが一般的です。
そのため、病院をローテーションで変わることの多い大学医局に所属する医師は、あまり退職金が期待できません。それに対し、市中病院に長年、勤務した医師はそれなりの退職金が支給されます。こうした点も、医師の年収を考えるうえでは考慮すべきでしょう。
医師にとって「30代半ば」はキャリアの岐路だが…
医師からよく聞くのは、30代前半までは臨床の経験を積み、専門医の資格も取得し、仕事のやりがいや手ごたえがどんどん増していくということ。なかには、大学院に進んで博士号を取得したり、海外留学のチャンスが巡ってくるといったこともあるでしょう。
しかし30代半ばを過ぎると、大学の医局に残るか、医局を離れて市中病院やクリニックに移るか、あるいはフリーで活動するか、キャリアの岐路を迎えます。
30代後半になり、急に「将来の不安」に襲われた女性医師
年齢:37歳
所属:公立病院(勤務医)
専門(標榜科):整形外科
加藤さん(仮名)は30代の初めに専門医の資格を取得。臨床で経験を積み、病院でのポジションは順調にアップしてきました。収入についてもアルバイトを合わせれば、同世代の会社員や公務員よりかなり恵まれています。
忙しい合間を縫って買い物をしたり、休暇には友人と海外旅行をしたり、プライベートも充実。
「でも30代後半に突入すると、これからのキャリアやプライベートをどうするか、10年後の自分はどうなっているのだろうと、不安になってきたんですよ。」
女性にとって特に30代は、結婚や出産のちょうどよいタイミング。40代に差し掛かると高齢出産を意識せざるを得ません。
そういう意味で、女性医師の30代は、キャリアにおいても人生においても大きな岐路なのです。
「お金のことをもっと真剣に考えなければ」…医師の“弱点”に気づいた
さらに最近、加藤さんの頭を悩ませているのが、所属する病院の職場環境です。
手術の件数は多く、臨床医として経験を積む点ではまったく不満はありません。上司や部下との人間関係も良好。
「ただ、納得いかないような雑用がどんどん増えてきて、時間にしろストレスにしろ、もう限界って感じで…。」
こうして転職や新たな人生設計を考え始めた加藤さん。ただ、転職するにしても、婚活に本腰を入れるにしても、そこにはリスクが付きまといます。
「医者って結局、自分の身体が資本の仕事であって、もし働けなくなったら、収入は激減しちゃう。それに、勤務先を変えるにしたって、結婚するにしたって、お金のことが付いて回る。お金のことをもっと真剣に考えなきゃいけないと気づいたんです。」
そんなふうに意識が変わると、加藤さんにはこれまで見えなかった医師の弱点も見えてきたとか。
ちょっとアルバイトするだけで世間一般をはるかに超える収入が得られるため、金融リテラシーが低い人がすごく多い。入ってきたお金は何気なく食事や買い物に使ってしまい、お金がないならまたアルバイトすればいいやと考え、ほとんど貯蓄が増えていない。
「これじゃいけないと思い、資産運用について調べるなかで出会ったのが不動産投資。先日セミナーに参加して、そのあと思い切って最初の一歩を踏み出しちゃいました。」
思い切って2550万円の新築ワンルームに投資した結果
加藤さんが購入したのは、首都圏の新築ワンルームです。価格は2550万円。頭金10万円と諸費用100万円は自己資金でまかない、あとの2540万円は地銀で35年ローンを組みました。
収支は、ローンの元利返済のため、月々8000円ほどの持ち出しで、年間では10万円弱のマイナス。ただ、初年度は購入諸費用の分で不動産所得が赤字になり、給与所得との損益通算によって、トータルでは44万円の黒字となりました。
「やってみると、融資がすんなり通ったことや、購入後まったく手間が掛からず、仕事に支障をきたさなかったこと、不動産所得と給与所得との損益通算など、これまで知らなかったことだらけ。それでも思い切って一歩踏み出してみて、意外と自分でもできると感じました。次は、1棟マンションを購入するのが目標かな。」
どんなことでも、知識だけではなく実践を通して一人前になっていくはずです。「お金」や「投資」もそれと同じ。基礎知識をマスターすることは大事ですが、ある程度まで来たら、まずは一歩を踏み出し、さらに学びを深めていきましょう。加藤さんの行動は、そのことの大切さを教えてくれています。
大山 一也
トライブホールディングス 代表取締役社長
植田 幸
資産コンサルタント、宅地建物取引士、AFP(日本FP協力認定)
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