真面目に働き続けてきた父が逝去。母と娘2人は相続手続きに着手しますが、納税不要と高をくくっていたところ、想定外の名義預金の出現で状況は一変します。姉妹はひどく動揺しますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
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ビジネスを成功させた父が、密かに蓄えていた預貯金
今回の相談者は、60代の専業主婦の佐川さんと、同じく60代の佐川さんの姉のお2人です。数ヵ月前に父親が亡くなり、相続の手続きが必要になりました。母親は健在で、独身の姉と自宅で2人暮らしをしています。佐川さんは結婚し、他県に住んでいます。
佐川さんの父親の財産は、母親と姉が暮らす自宅、佐川さんが暮らす他県の自宅の土地、そして預貯金とシンプルです。土地については、そこに暮らす人が相続するよう父から聞かされていたこともあり、言葉通りにする予定です。父親は遺言書を残しませんでしたが、とくに揉める要素はないように思えました。
しかし、問題が発覚しました。名義預金の存在です。2ヵ所の不動産と父親の預金の合計金額は基礎控除内に収まったため、相続税の納税は不要だと考えていました。ところが、取引銀行を調べると、上記の財産以外に、名義預金が5000万円もあることが判明したのです。
父親は30代で脱サラし、母親と一緒に食料品店を経営していました。朝から晩まで働き詰めでしたが、経営は順調で、かなりのお金が手元に残せていたようです。
名義はほとんどが佐川さんと姉になっていましたが、佐川さんは結婚して以降ずっと専業主婦で、独身の姉は会社を退職して以降、給与収入はありません。父親の口座から子ども名義の口座に振り替えて預金されており、ほとんど使われていない状態です。これは明らかな名義預金となるため、父親の相続財産として申告する必要がありました。
佐川さん姉妹はこの預金口座をどうすればいいか判断できず、筆者のもとを訪れたのです。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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