(※写真はイメージです/PIXTA)

真面目に働き続けてきた父が逝去。母と娘2人は相続手続きに着手しますが、納税不要と高をくくっていたところ、想定外の名義預金の出現で状況は一変します。姉妹はひどく動揺しますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

不動産は姉妹各自の名義に、現金の分割は話し合って

相続税の配偶者控除として「配偶者は財産の半分まで、あるいは1億6000万円まで無税」という特例があります。これの適用範囲であれば、納税は不要になります。

 

今回の場合、名義預金を父親の財産として申告し、母親の財産として相続することは可能です。その後、母親の相続のときに姉妹が相続するという順番です。

 

佐川さんの母親は80代ですが、まだまだ元気だとのこと。しかし、急に認知症の症状が出たり、急に体調を崩したりすることも考えられるため、父親の相続と同時期に、母親の対策も進めることが必要です。

 

不動産は、佐川さんと姉のそれぞれの名義にしたほうが登記の手間が省けます。金融資産については、どの程度母親に相続させるか、検討して決めるようにアドバイスしました。

高齢母の相続も見据え、抜かりなく遺産分割を

佐川さんは子どもたちが独立して手を離れ、夫も健在で生活に余裕があります。姉は母親のサポートのみとなったため、時間に少し余裕が出てきたといいます。

 

そのようななか、自分たちで遺産分割協議をし、相続税の申告書を作成・提出することは可能ではありますが、万一間違いがあれば、税務署から指摘・追徴される場合があること、また、名義預金の扱いは慎重にすべきものであることを説明し、当社と税理士法人がサポートすることになりました。

 

申告期限まで余裕はありましたが、母親の相続税申告時に困らないよう、姉妹で情報共有しながら進めていくことになりました。

 

相続財産を調べるなかで、多額の名義預金が出現するケースは珍しくありません。重要なのは、名義預金を隠すことなく申告することです。税務調査にならないよう、正確な申告をしておけば不安はありません。また、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を活用すれば、相続税額は大きく圧縮できます。

 

佐川さんのケースでは、高齢となった母親の意思確認ができるうちに、二次相続の節税対策をしておくことが大切です。父親の相続税申告の際、先取りして次のことも決めて進めておけば、将来的な不安も軽減できるでしょう。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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